2013-09-01から1ヶ月間の記事一覧

三冊

昨日の毎日新聞、「今週の本棚」トップは寺山修司『戦後詩』講談社文芸文庫への荒川洋治評。冒頭。《 詩人寺山修司(一九三五〜一九八三)一九六五年、二九歳のときに書いた批評だ。ほぼ半世紀のいまも、これほど魅力的な詩論は日本に現れていない。 》 すご…

『冬の紳士』

大仏次郎『冬の紳士』講談社大衆文学館文庫1995年初版を読んだ。まだ焼け跡が目立つ昭和25年(1950年)の冬、新橋駅そばの小さな飲み屋にふらっと来た客が、後日「冬の紳士」と呼ばれる物静かな初老の男。彼を巡って物語は進む。冬の紳士、実は実業界の大物…

『旅の誘い』

大仏次郎(おさらぎ・じろう)『旅の誘い』講談社文芸文庫2006年2刷を読んだ。読み始めは、なんか教科書のような文章だなあと思ったけど、進むにつれてこれはちょっとやそっとでは書けない文章だと気づいた。今まで読んだどの文筆家ともどこか違う。端整、粋…

『絆回廊』

プーさん、ディズニー、スヌーピー、全く縁がなかったなあ、と思うきょうこのごろ午前九時から水戸市からの視察の案内。カワセミに二度遭遇。昼ごはんを食べながらテレビを観ると、NHKBSの新作『怪奇大作戦』の宣伝をしている。いやあ、タマランなあ。…

「ハヤカワ・ミステリ(ポケミス)」

白砂勝敏氏からメール。18日に記した木彫造形作品「黎明」について。《 今回も加藤先生には好評でした^^ 》 武蔵野美大名誉教授加藤昭男氏のこと。《 9月に創刊60周年を迎えた早川書房の海外ミステリー小説の人気シリーズ「ハヤカワ・ミステリ(ポケミス…

『ぶらぶらひでお絵日記』・つづき

昼過ぎ、薬師丸ひろ子のEPレコードをかける。『セーラー服と機関銃』1981年、『探偵物語』1983年、『メイン・テーマ』1984年そして『ステキな恋の忘れ方』1985年。そういえば彼女の映画、観たことがない。 『ぶらぶらひでお絵日記』・つづき。《 池袋へ絵…

『ぶらぶらひでお絵日記』

ブックオフ三島徳倉店へ自転車で行く。井上ひさし『モッキンポット師の後始末』講談社1972年初版帯付、篠田真由美『幻想建築術』PHP文芸文庫2011年初版、米原万里『終生ヒトのオスは飼わず』文春文庫2010年初版、計315円。 昨日買った吾妻ひでお『ぶらぶ…

枠からの解放

昨日アップした山下和仁「展覧会の絵」の続き。《 前半にやや弾き急ぎ感がないではないが、それも含めまるで嵐のようにデモーニッシュな演奏に圧倒される。これほどの演奏家がなぜ過小評価されてきたのか。ギターを古典楽器の枠から解放したからだろうか。 …

山下和仁/サビーカス/リカルド/ユパンキ

《 山下和仁、演目はクラシックだが、まるでサビーカスを聴いているような情動が音の細部まで神経を張り巡らせている。けっして超絶技術だけではない。 》 椹木 野衣《 山下和仁のギター。クラシックの演目でもフラメンコのようでもあり、津軽三味線のようで…

現代短歌 そのこころみ・つづき

関川夏央『現代短歌 そのこころみ』集英社文庫2008年初版から。《 内向してイメージを限りなく鋭く磨きあげれば、共感を喚起する力は歌から失われる。 》 108頁《 「青春歌」に必要なのは、表現上の瞬発力とやわらかな精神である。そののちにもとめられるの…

現代短歌 そのこころみ

関川夏央『現代短歌 そのこころみ』集英社文庫2008年初版を読んだ。《 だがここで、短歌という形式ははたして「古い」か、俵万智の感受性は「新しかったか」、そう斎藤美奈子は疑問を投じる。逆ではないのか。「新しい革袋(短歌という形式)に古い酒(古い…

西瓜糖の日々/述語的絵画

中秋の名月。 リチャード・ブローディガン『西瓜糖の日々』河出文庫2011年5刷を読んだ。ほとんどのものが西瓜糖で作られる、つつましく物静かな別世界の人たち。しかし、そこでも苦悩はあるし、自殺もある。じつに壊れやすい、フラジャイルな小さな共同体。…

黎明

心地良い風に吹かれてブックオフ徳倉店へ自転車で行く。彼岸花がいたるところに咲いている。公孫樹の下は銀杏だらけ。井上ひさしの単行本を五冊。『ドン松五郎の生活(上・下)』新潮社1975年初版帯付、『十二人の手紙』中央公論社1978年初版帯付、『イーハ…

名短篇、さらにあり

台風一過、晴天に青富士。ネットには台風の話題満載。淀川に転落流された子どもを中国人留学生が救出、靖国神社の大木が倒れ、作業員が下敷きとか。いずれも軽症という。もんじゅへの一本道が土砂崩れで通行、通信不能。古くは1960年ローマオリンピックの年…

名短篇、ここにあり

昼の空は異常に暗いのに雨風ともにほとんどない。台風は今いずこ。午後には日が差してくる。畳の上に大の字になる。気持ちよい風が吹き抜けてゆく。 北村薫・宮部みゆき 編『名短篇、ここにあり』ちくま文庫2008年7刷を再読。最近読んだのに、筋の大方を忘れ…

表紙に金魚の絵のある本

未明の雨が上がって清澄な大気。嵐はまだか。暑い中、ブックオフ長泉店へ自転車で行く。堀田善衛『ゴヤ I〜IV 』朝日文芸文庫1996年2刷、1994年初版、アーヴィング『アルハンブラ物語 上・下』岩波文庫1997年初版帯付、計630円。こういう長い本、いつか読む…

泣ける話、笑える話

お昼まで、私立三島高校の男女生徒さん16人と先生と、源兵衛川中流の雑草刈りなどに汗を流す。若い人は元気。つい張り切ってヘトヘト。午後、畳の上でゴロン。吹き抜ける風が心地良い。 徳岡孝夫・中野翠『泣ける話、笑える話』文春文庫2012年初版を読んだ…

卵塔場の天女

朝から暑い。気分転換にブックオフ長泉店へ自転車で行く。三浦哲郎『おふくろの夜回り』文春文庫2013年初版帯付、宮武外骨『明治奇聞』河出文庫2006年3刷、計210円。 昨日ふれた泉鏡花「卵塔場の天女」(『鏡花 小説・戯曲選 第七巻 芸能篇』岩波書店1981年…

幻妖の水脈

夏が戻った昼間。 昨日の『黄色い髪』朝日新聞社1987年初版は、干刈あがたの長編小説。少し読んだけれど、中学生の娘と母親の物語、今の気分に合わないので本棚に返した。『日本幻想文学大全 幻妖の水脈』(東雅夫編/ちくま文庫)の収録作品。【序】澁澤龍…

土屋光逸/幻視の系譜

ブックオフ函南店へ自転車で行く。吉田篤弘『という、はなし』筑摩書房2006年初版帯付、深町眞理子『翻訳者の仕事部屋』ちくま文庫2001年初版、マーサ・グライムズ『「古き沈黙」亭のさても面妖』文春文庫1992年初版、リチャード・ブローディガン『西瓜糖の…

ささめくその先の、光の屈折

朝晩涼しくなってきた。これで元気になればいいのだけれど、夏の疲れが出てきそう。毎日なんやかやと人に会う。 昨日は長泉町下土狩駅そば、スーパー・マックス・バリュー地下の『ギャラリーAct1』へ友だちと行った。そこに展示してある本荘赳の油彩風景画…

自己の探求・つづき

清涼の朝。 中村元『自己の探求』は、「自己」「生命」「運命」三章から成る。古今東西の先哲の著作を経巡って、自己とは何か、生命とは何か、運命とは? と探求を続ける。確たる結論=解決は勿論出ない。後は個人それぞれが自ら実践し考えること。どこを引…

自己の探求

雨が止んだので、源兵衛川の月例清掃へ行く。カワセミが飛んでいく。カモが遠ざかってゆく。 中村元『自己の探求』青土社1987年新装初版を日にちをかけて読んだ。 どれだけ金をつぎ込んだのか。どれだけ金をかけるのか。続・東京五輪が大阪万博に重なる。安…

RISING TIDE

子ども向けの冒険探偵小説は、どれもハラハラドキドキさせる早い展開で面白かった。プロの仕事だ。時代を感じさせると言えば言える。が、それを忘れさせる展開。 横溝正史『金色の魔術師』を読んで子ども時代の気持ちを思い出した。事件の舞台が東京。東京と…

金色の魔術師

横溝正史『金色(こんじき)の魔術師』角川文庫1979年初版を読んだ。カバー裏側の紹介文に《 推理ジュヴナイルの最高傑作! 》とあるので読むしかないだろう。1952年に子ども雑誌に連載。「編集構成・山村正夫」とある。乱歩同様、少年探偵団の活躍(あるい…

少年探偵王

芦辺拓・編『少年探偵王』光文社文庫2002年初版、鮎川哲也(短篇ミステリ三篇)と江戸川乱歩(少年探偵団もの)を読んで全篇読了。血湧き肉踊る展開にまたまた止まらない止められない。ああ面白かった。江戸川乱歩、高木彬光そして鮎川哲也。御三家揃い踏み…

吸血魔

高木彬光『吸血魔』(芦辺拓・編『少年探偵王』光文社文庫2002年初版、収録)を読んだ。1950年、少年雑誌に連載。戦前中国大陸を荒らしまわった強盗団の残党が隠した財宝を巡る、戦後の川崎、東京を舞台にした誘拐殺人事件を、名探偵神津恭介が解決へ導く冒…

夜の皇帝/深夜の魔王

高木彬光『夜の皇帝/深夜の魔王』神月堂2003年を読んだ。昨日の『骸骨島』同様、少年向け雑誌に「夜の皇帝」は1956〜1957年に、「深夜の魔王」は1959〜1960年に連載された。 「夜の皇帝」は、ロシア革命で断絶したロマノフ王朝の秘宝を巡る事件。 「深夜の…

骸骨島

午後友だちの車に同乗して裾野市水窪82、農家の集落にある隠れ家のお店「草の実」へ行く。座席数十三席のこじんまりとしたカフェ。二階は手作り作品の展示販売スペース。去年の暮れに開店。女性陣で満席。そろそろ紹介してもいいだろう。なにせ月・火・金…

金魚/新刊! 古本文庫

朝日新聞デジタルに源兵衛川http://www.asahi.com/national/update/0831/TKY201308310048.htmlが動画で紹介されている。 知人の花火会社丸玉屋http://www.marutamaya.jp/がドイツの国際花火大会で2位に。 知人女性がブログで書いていた。《 表紙に金魚の絵…