2014-01-01から1年間の記事一覧

「 泣きたいときには泣いていい 」

掬池友絢(ゆうけん)『泣きたいときには泣いていい』講談社2014年初版を読んだ。 我が家の裏手(北側)のお寺の娘さんの著書。檀家なので年末の挨拶に伺ったら、 お内儀さんから娘の本だといただいた。先だってNHKテレビ夕方の番組に出演。 明日、お寺の…

「 蒐集について 」

昨日の柳宗悦『茶と美』だが、北一明の茶碗は、茶器だとは私は考えていない。 あれは茶碗のかたちをしたオブジェである。茶碗のかたちにどれだけの美を展開 できるか、と挑戦した結果である。新しい革袋には新しい酒を。新しい茶碗には 新しい美を。自然美と…

「 茶と美 」

柳宗悦『茶と美』講談社学術文庫2000年初版を読んだ。茶道家の戸田勝久が、 茶道にかかわる主要な論考を抜粋、編纂したもの。最初の「陶磁器の美」から。 《 科学は規則を建てるが、藝術は自由を欲する。古代に人は化学を持たなかったが 美しい作を産んだの…

「 エール!3 」

伊坂幸太郎ら六人の書き下ろし『お仕事小説アンソロジー エール!3』実業之日本社文庫 2013年初版を読んだ。六篇どれも、じいんと暖かくなる作品だ。いやあ、参った。 いい読後感。 穏やかなのでブックオフ函南店へ自転車で行く。文庫本を七冊。愛川晶『芝…

「 ロシアの革命 」

松田道雄『カラー版 世界の歴史 22 ロシアの革命』河出書房新社1970年初版を読んだ。 これは、荒川洋治『本を読む前に』、「この場を借りて」で紹介していた『ロシアの革命』の 「あとがき」がオモシロカッタから。荒川洋治曰く。 《 その「あとがき」も、…

「 沼津 」

ブックオフ長泉店で六冊。『日本文学全集 80 大岡昇平集』集英社1976年3刷、乾くるみ 『カラット探偵事務所の事件簿2』PHP文芸文庫2012年初版帯付、山田風太郎『妖説太閤記 (上・下)』角川文庫2011年初版、ブッダ『悪魔との対話』岩波文庫2006年23刷…

「 日本文学全集 」

荒川洋治『本を読む前に』新書館1999年初版、日本文学全集を自分が編んだら、という 空想企画が興味深い。1996年7月の発表。 《 そのほ他、昨今の文壇、読書界における評価を考えに入れつつ、現在という時点に立った 文学全集のイメージをぼくなりに描き出し…

「 本を読む前に 」

荒川洋治『本を読む前に』新書館1999年初版を読んだ。1990年代後半に発表されたものが ほとんど。これほど本音をズケズケと書き、辛辣に批評(批判?)した書物は久しぶり。 昭和の時代には好んで論争を招く文章がずいぶんあった。平成になって文学論争は 鳴…

「 沿線風景 」

天皇誕生日。1958年12月23日 東京タワーが完成。 原武史『沿線風景』講談社文庫2013年初版を拾い読み。「第十話」は三島などが舞台。 三島広小路駅も出て来る。向かいの鰻屋のことも。 《 幕末以来、三島では150年にわたり、蒲焼きの味の開発にひそかに取…

「 今週の本棚 2014 この3冊 」

三上延『ビブリア古書堂の事件手帳 5』メディアワークス文庫2014年初版、 「あとがき」。 《 「念のためとか思って買ったけど……これは使わなんだろうな」と思った本が、 結果的にバンバン登場することがあります。一見無駄なものでもとにかく一度は 手に取…

「 ビブリア古書堂の事件手帳 5 」

三上延『ビブリア古書堂の事件手帳 5』メディアワークス文庫2014年初版を 読んだ。なんだかなあ、という読後感。これで最終巻と思いきや、 《 六巻以降の取材や資料集めもしています。 》 いつまで続ける気だろう。寺山修司『われに五月を』作品社のことな…

「 白砂勝敏展 」

造形作家白砂勝敏氏の車に同乗、静岡市清水区のギャラリーSUNの白砂展へ。 原始的な楽器ディジュリドゥ Didgeridoo を模した(楽器としても十分使える) 焼きもの(焼き締め)オブジェが九本というか九体というか。当初はオブジェとして 鑑賞。スーッと立…

「 歌の彩時記 」

馬場あき子『歌の彩時記』読売新聞社1996年初版をパラパラと読む。見開き二ページ、 右に短歌、つづいて鑑賞文。約百五十の歌を詠み、気に入った作品の鑑賞文を読んだ。 印象に残った歌から。 大楡の新しき葉を風揉めりわれは憎まれて熾烈に生きたし 中城ふ…

「 三部作 」

サミュエル・ベケットの三部作小説『モロイ』『マウロンは死ぬ』『名づけられぬもの』 を通読したが、ドストエフスキーの小説のようには、多分再読はしないだろう。翻訳は どれも良かった。しかし読み通すのには根性が要る。根性だい。名作かも知れんけど、 …

「 名づけられぬもの 」

サミュエル・ベケット『名づけられぬもの』(『新集 世界の文学43 クノー ベケット』中央公論社1973年2刷、収録)を読んだ。『モロイ』『マウロンは死ぬ』 に続く第三部。 《 しかしながら棒杖の時代は永遠に過ぎ去って、ここでわたしがあてにできるのは …

「 マウロンは死ぬ 」

晴行雨読。一日雨。家こもり。サミュエル・ベケット『マウロンは死ぬ』(『世界文学全集 99 ジョルジュ・バタイユ、モーリス・ブランショ、サミュエル・ベケット』講談社1976年初版、 収録)を読んだ。昨日の『モロイ』を継ぐ小説、ヌーヴォ・ロマン。『名…

「 モロイ 」つづき

サミュエル・ベケット『モロイ』白水社1992年新装初版を読了。前半の1部は、 モロイが不自由な体を何とか動かして(這って)自宅へ戻る話。後半の2部は、 モロイを探すように命じられたモランが、一人息子を従えて徒歩で行くが、 途中で足が悪くなり、モロ…

「 モロイ 」

投票をすませる。同日の三島市長選は、現職以外に出馬はなく無投票。自転車を 走らせてブックオフ長泉店へ。手ぶらの帰り道スーパーへ寄り、食パンを買い、 小さめの段ボール箱に入れる。箱は処分本用。 サミュエル・ベケット『モロイ』白水社1992年新装初版…

「 唯脳論 」再び

養老孟司『唯脳論』青土社1998年31刷を再読。今回付箋をつけた箇所から。 《 では、なぜヒトは脳つまり「構造」と、心つまり「機能」とを、わざわざ分けて 考えるのか。それは、われわれの脳が、そうした見方をとらざるを得ないように、 構築されているから…

「 人間科学講義 」つづき

養老孟司『人間科学講義』ちくま学芸文庫2008年初版、後半は話題が多岐にわたる。 興味を覚えた箇所を一つ一つ取り上げるとえらい量になるので、適当に選ぶ。 《 ここから逆に都会人思考原則が導き出される。それは予測と統御、平たくいうなら 「ああすれば…

「 人間科学講義 」

養老孟司『人間科学講義』ちくま学芸文庫2008年初版を読んだ。オツムをガラガラポンに してもう一度組み立てないと、よくワカラン。でも視点の転換、これは面白い。 《 だからもちろん「人間という普遍的尺度」は「科学的に」「客観的に」 規定されなくては…

「狂人の太鼓 」

やっと探し出したリンド・ウォード『狂人の太鼓』国書刊行会2002年初版を再読。 といってもこの本、1930年にアメリカで出版された「文字のない小説」。 《 奴隷商人の父親がアフリカから持ち帰った太鼓は、一家に何をもたらしたのか。 父の教えを守り、書物…

「 後背地 」

昼前に野暮用を二つこなしてお掃除も済ませ、昼過ぎに読書を始めたら猛烈な眠気。 夜は九時間余り寝ているのに〜。蒲団に入る。起きれば早、日は西に。冬の日は短い。 夕食の買出し。きょうは何をしたのか。こんな一日があってもいいか。 毎日新聞7日の「今…

「 フラジャイル 」

天気晴朗。開戦記念日。 フラジャイル Fragile なのだ。昨日の足立元『前衛の遺伝子』「第八章 一九五〇 年代の前衛芸術における伝統論争」で、イサム・ノグチ、岡本太郎、丹下健三に 言及した部分。 《 とはいえ、不仲になったわけでもないものの、やがて丹…

「 前衛の遺伝子 」

足立元『前衛の遺伝子 アナキズムから戦後美術へ』ブリュッケ2012年2刷を 読了。特に興味深かったのは、第五章「反シュルレアリスムの美学」と第六章 「大東亜のモダニズム」。どちらも戦時下を扱っている。 《 すなわち、日本のファシズムの美学は、あくま…

「 前衛の遺伝子 」

足立元『前衛の遺伝子 アナキズムから戦後美術へ』ブリュッケ2012年2刷、 前半を読了。面白い。とりあえずメモ。 《 大きくいえば、近代日本の前衛芸術の歴史は、アナキズムを起源に持ち、 アナキズムと共産主義が複雑に絡みつつ反発し合う軌跡でもあったの…

「 夜行 」

足立元『前衛の遺伝子 アナキズムから戦後美術へ』を少し読み進める。 なかなか面白い。風邪から恢復途上なので引きこもり。養生養生。 ネットの見聞。 《 英仏露の3か国語などに堪能な翻訳家で、岩田宏の名で詩人としても活躍した 小笠原豊樹さんが2日、…

「 前衛の遺伝子 」

昨日届いた足立元『前衛の遺伝子 アナキズムから戦後美術へ』ブリュッケ2012年2刷、 3800円を少し読んだ。 一日雨。何年ぶりかの風邪気味。大人しく蒲団にこもる。蒲団はいいなあ。 ネットの見聞。 《 ちなみに下北沢に店を構えていたときはサントリーオール…

「半島。反転としての 」

昨夜風呂に沈んでいてはっと閃いた。昨日の松浦寿輝『半島』は、川端康成『雪国』の 反転ではないか、と。『片腕』までは思い浮かべながら『雪国』には思い至らなかった。 国境の長いトンネルを抜けると雪国。瀬戸内海に突き出た半島の先五十メートルほどの …

「 半島 」

松浦寿輝『半島』文春文庫2007年初版を読んだ。冒頭から吉田健一を思わせる くねくねと粘りつくような文体だ。冒頭。 《 しかし幸いなことに長く続いた夏の陽射しもようやく翳りを見せてうにやひとでや やどかりや小魚たちがめいめいひっそり生きている静か…