2014-10-01から1ヶ月間の記事一覧

「 波 」

昨日入手した川路柳虹詩集『波』西東社1957年を読んだ。四十頁に満たない詩集は、 「波」と「火の頌歌」の二篇からなる。 《 この詩集は終戦後にかかれた作品のなかから選まれた二篇である。 》 「あとがき」 「選まれた」は「選ばれた」の誤植だろう。他に…

「 どちらでもいい 」

アゴタ・クリストフ『どちらでもいい』ハヤカワepi文庫2008年初版を 読んだ。堀茂樹の「訳者あとがき」から。 《 そんな事情も手伝って、この短編集は、より完成度の高いA・ グリストフ作品と関係づけながら味読されるときにこそ存在価値が 上がるのにちは…

「 第三の嘘 」

アゴタ・クリストフ『第三の嘘』早川書房1994年13刷を読んだ。 『悪童日記』『ふたりの証拠』につづく第三部。双子の兄弟はやっと 再会を果たす。が、……。 《 この作家の世界に足を踏み入れると、何が「真実」で何が「嘘」 なのか、それともすべて「嘘」なの…

「 ふたりの証拠 」

赤瀬川原平の視線はさりげなく世界の裂け目へと注がれていた。なにせ 『宇宙の缶詰』だから。無用物物件だから。スゴイ人だった。重厚長大、 厳かなもの、立派なものが席巻していた時代に早、空き缶で究極の缶詰を制作 してしまったのだから。無用物物件によ…

「 1969 MILES - FESTIVA DE JUAN PINS 」

若い知人女性がに頼まれてセネガルの歌手ユッスー・ンドゥール YOUSSOU N'DOUR のCD三枚『 THE LION 』1989年、『 SET 』1990年、『 THE GUIDE ( WOMMAT T ) 』1994年を貸す。彼女、トランペットを練習しているとか。 で、何かを、と追加の依頼。クラシッ…

「 Steve Coleman WORLD EXPANSION 」

ジャズ・アルト・サックス奏者スティーヴ・コールマンのCDを全く 久しぶり(今世紀初か)に聴いた。驚いた。こんなに弾けていたのか。 Steve Coleman and Five Elements 『 WORLD EXPANSION 』1986年録音。 1987年に出た当時は戸惑うばかりだった。今じゃ…

「うみはぎなみほどき」

東京・吉祥寺のトムズボックスから宇野亜喜良個展『シリアスとエロス』の 案内葉書。11月1日〜30日。 http://www.tomsbox.co.jp/《 最近の週刊誌の仕事の原画展です。(中略)ぼくは修正液を使いますが、 自分の心の移行がよくわかって、愛しい痕跡でもあり…

「夢の超特急 開通記念」

本棚から『毎日グラフ』別冊1964年10月1日号を取り出す。特集「夢の超特急 開通記念 日本の鉄道・世界の鉄道」。新刊本屋で買ったが、当時はまだ中学生。 表紙に「ソノシート 東京─新大阪 音の旅 時速200キロ」とあるので、 レコード棚を漁ったら出てきた…

「市民普請大賞 グランプリ」

昨夜、私が理事を務めているNPO法人グラウンドワーク三島事務局からメール。 《 このたび、公益社団法人土木学会が創設した、土木学会100周年記念事業 「市民普請大賞」において、グラウンドワーク三島の取り組み「市民・NPO・行政・ 企業による地域協…

「悪童日記」

昨日の林由紀子さんのツイートで上下を知る。 《 坂東壯一蔵書票集出版記念展は11月1日まで。普及版を既に入手した人は スリップケースに上下があることにご注意。小口に小さな白い点のある方が下 。触ってみるとわかるが上縁は平で下縁は中央に窪みを付けて…

「坂東壮一蔵書票集」

昨夜は続けてジャマイカ出身のレゲエ詩人リントン・クウェシ・ジョンソン Linton Kwesi Jonson のデビュー25周年記念パリ・ライヴCD『 LIVE IN PARIS 』2004年に聴き入った。シビレル。凍れる炎。低温でも火傷する。 クールでなんと熱いことか。レベル reb…

「セネガル、マリ、アルジェリア」

昼前、若い知人女性から聴いてみて、と手渡された新作CD、taxy BY band 『 CI AL BI 』SUN'EYE RECORDSを聴く。日本人一名セネガル人九名の編成で、 レゲエを土台にパームワインミュージックも香るゆるい音楽。 彼女が探していたセネガルの歌手ユッスー・…

「探偵・花咲太郎は閃かない」

入間人間(いるま・ひとま)『探偵・花咲太郎は閃かない』メディア ワークス文庫2010年5刷を読んだ。ライトノベルだけれどこんな表記。 《 これを一字一句、読み零さない読者がいるんだろうか。 》 48頁 零にルビ(こぼ)がない。意外。そう思うのは私だけか…

「墨汁一滴」「二日物語」

正岡子規『墨汁一滴』岩波文庫1994年29刷から。 《 小生も追々衰弱に赴き候に付(つき)二十句の佳汁を得るために 千句以上を検閲せざるべからずとありては到底脳の堪ふる所に非ず候。 》 23頁 よくわかる。お付き合いであっても駄目なものは見たくはない。…

「墨汁一滴」

正岡子規『墨汁一滴』岩波文庫1994年29刷を読んだ。 《 などあるを見るに古の人は皆実地を写さんとつとめたるからに 趣向にも画法にもさまざまな工夫して新しき画(え)を作りにけん。 土佐派狩野派などといふ流派盛になりゆき古の画を学び師の筆を模するに …

「絵を売る」

富士山初冠雪。上半分が雪模様。絵に描いたような。 午後、沼津市の美術展の会場で展覧会を終えたばかりの年上の画家から アトリエへ慫慂される。友だちの車で訪問。絵とは何か、という初歩にして 根源的なことについて自説を話す。富士山に登るのに静岡県側…

「夜のガスパール」

昨日書き忘れたが、『ボードレール散文詩集』は「パリの憂鬱(全)」とある。 この『世界の名詩集』三笠書房1967年、全十二巻、別巻『世界の名訳詩集』二巻、 丸背は背革印度産羊革に金版彫版の金押し。これがおしゃれ、というか好き。本巻の 革は臙脂色、別…

「ボードレール散文詩集」

ネットに掲載されていた樋口譲『国民須知』(公益堂、一九〇一年七月一五日) によると、人口総計43,228,863、東京の人口は1,425,366。 昨日記した江戸の最盛期に戻っている。 http://sumus2013.exblog.jp/23113641/ 『世界の名詩集5 ボ…

「まぼろしのインテリア」

松山巖『まぼろしのインテリア』作品社1985年初版を読んだ。柔軟で複合的な 視点がこの本を読み応えのあるものにしている。教えられることの多い、いい本だ。 《 明治の文明開化から現在に至るまで百年の暮しを六つの時代に分けて辿ってきた。 》 「あとがき…

「ごめんね青春!」

松山巖『まぼろしのインテリア』作品社1985年初版を途中まで読んだ。 《 私は各時代に起きた生活のズレを探す。そして、そこに暮しの断面を見て、 それをインテリアと呼ぶことにしたい。私が探すのは、華やかに飾りたてられた インテリアではなく、失われ、…

「続・日本の歴史をよみなおす」つづき

網野善彦『続・日本の歴史をよみなおす』筑摩書房でつくづく思ったのは、 言葉の詐術、よく言えば思い込みが今も横行していること。 《 先ほどもふれましたように、輪島の頭振(水呑)の中には、土地を 持てない人ではなくて、土地を持つ必要のない人がたく…

「続・日本の歴史をよみなおす」

網野善彦『続・日本の歴史をよみなおす』筑摩書房1996年3刷を読んだ。昔読んだ 日本史は何だったのか、と腹が立つほどの歴史観の逆転。これは興奮する。 《 これまでの歴史研究者は百姓を農民と思いこんで史料を読んでいましたので、 歴史家が世の中に提供し…

「怪建築十二段返し」

某ブログで白井喬二『怪建築十二段返し』が話題に挙がっていたので、 『怪建築十二段返し』大陸文庫1990年初版で読んだ。 http://d.hatena.ne.jp/OdaMitsuo/20141008/1412694172《 これはおそらく初めてのゴシック的時代小説であり、その斬新さに読者は驚い…

「舞田ひとみ14歳、放課後ときどき探偵」

歌野晶午『舞田ひとみ14歳、放課後ときどき探偵』光文社文庫2013年初版を読んだ。 中学二年生の女友だちの語りで物語は進む。ストリート・ダンス好きな舞田ひとみは 冴えた推理力を見せる。この三年は人を大きく成長させる。世界も広がり、深くなる。 面白か…

「舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵」

昨日、歌野晶午『舞田ひとみ14歳、放課後ときどき探偵』光文社文庫を買ったので、 その前作『舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵』光文社カッパノベルス2007年初版を 読んだ。六話を収録。第一話の結びで舞田ひとみの叔父の刑事が思う。 《 寮と署を往復し…

「幽霊紳士」

未明〜朝の台風18号接近通過で大雨。夜中によく目が覚めたせいもあり、気力が いまひとつ。しかし、暴風雨、やっぱり興奮。三島市の広報。 《 市内の佐野地区と北上地区に土砂災害警戒警報が発令されました。 午前8時25分、この地域に避難勧告を発令します。…

「文学論」

降りしきる雨。暗い日曜日。ダミアを聴くわけでなし。本棚を眺める。吉行淳之介 『四角三角矩形』創樹社1974年初版を手にとる。装幀・レイアウト=粟津潔。見返しは マリリン・モンローがベッドでにっこりくつろぐ姿。以前も書いたけど、そこに挟まれた 紙マ…

「 Elmo Hope , Haris Alexiou 」

ジャズピアノニスト、エルモ・ホープのLPレコード『 Elmo Hope Trio 』1959年録音、 ギリシャの歌姫ハリス・アレクシーウのCD『 H Agapi Tha Se Vri Opou Ke Na Se (Love Will Find You..) 』2009年を聴く。どちらも琴線に触れる。アレクシーウ (1950…

「考える人」

秋天に青富士。♪富士は日本一の……♪ こわい山。美は危うきに遊ぶ。 グラウンドワーク三島事務局から雑誌『考える人』2014年秋号新潮社をもらう。 連載の池内紀(おさむ)「富士 ある山の伝記 第六回 火の山水の山」に 〈「水の都」の再生〉という項目が立てら…

「ヴェルレーヌ詩集」

ポール・ヴェルレーヌ『世界詩人全集8 ヴェルレーヌ詩集』(堀口大學・訳)新潮社 1967年初版を読んだ。二番目の詩「かえらぬ昔」冒頭四行。 《 思い出よ、思い出よ、僕にどうさせようとお言いなのか? その日、秋は、冴えない空に鶫(つぐみ)を舞わせ 北…