2014-06-01から1ヶ月間の記事一覧

「 麻薬3号 」

五味康祐『麻薬3号』(『五味康祐代表作集 第五巻』新潮社1981年収録) を読んだ。舞台は昭和二十六年冬の神戸。薬物中毒の若いヤクザな男の語りで 物語りは進む。悪の世界へ堕ちてゆく男を巡る金、売春、麻薬そして賭場。 裏社会に蠢く男と女が有情、無情…

「 螺旋形を想像せよ 」

吉増剛造『螺旋形を想像せよ』小沢書店でふれられている本で、手元にある 本を取り出す。「柳瀬尚紀氏の訳注─ルイス・キャロル『シルヴィーとブルーノ』」 は、ちくま文庫1987年を参照。ついでに『ルイス・キャロル詩集』筑摩書房1977年 初版を取り出し、双…

「 日本近代の名作 」

吉本隆明『日本近代の名作』新潮文庫2008年初版を読んだ。 《 漱石、芥川、賢治。近代文学の名作24篇の本質を鮮やかに射抜く、 吉本文学論の精髄! 》 帯文 《 ひと度死んだ後蘇った作家や作品でないと名作とか古典とか呼ぶことは、 大へん難しい。 》 「…

「 砦の冬 」

野呂邦暢(のろ・くにのぶ)『草のつるぎ』文藝春秋1974年初版、後半「第二部 砦の冬」を読んだ。「あとがき」から。 《 わたしは昭和三十二年六月、陸上自衛隊に入隊した。初め二ヵ月は九州、佐世保の 北東部にある海辺の駐屯地で過ごした。 》 《 第二部「…

「 草のつるぎ 」

昼まで日大生三十人ほどをグラウンドワーク三島小松理事長と一緒に源兵衛川などを、 ゴミ拾い体験などをして案内。授業科目「フィールドワーク」の学生たちで、去年好評 だったので今年も、と。マンホールの蓋が自治体によって違うという余談が学生たちに 好…

「 日本語と日本人の心 」

大江健三郎・河合隼雄・谷川俊太郎『日本語と日本人の心』岩波現代文庫2002年初版を 読んだ。河合隼雄の講演、大江、谷川を交えたシンポジウムそして谷川俊太郎の語り。 河合の講演から。 《 「耳をすます」という非常にいい表現は、ほかの国の言葉ではちょ…

「 詩の力 」

吉本隆明『詩の力』新潮文庫2009年初版を読んだ。 《 戦後の現代詩を主軸にして詩歌の全般を取り上げて短い解釈を試みた。 》 「はじめに」 作家と作品の本質的なところを簡明に明かしている。じつに深い読みだ。 《 俳句の発生を考えるには、短歌が壊れてい…

「 寡黙なる巨人 」

多田富雄『寡黙なる巨人』集英社文庫2010年初版を読んだ。脳梗塞で半身不随に なった著者の壮絶な闘病記。 《 これは絶望の淵から這い上がった私の約一年間の記録である。 》 「はじめに」 《 右半身の自由を失い、字が書けなくなった。喉の麻痺のため、発音…

「 「私」の秘密  哲学的自我論への誘い 」

中島義道『「私」の秘密 哲学的自我論への誘い』講談社選書メチエ 2002年初版を読んだ。なんとも破天荒な著作だ。大胆不敵に論を進める。 《 根源にさかのぼる運動が行き着くところは、最終的にそれ以上さか のぼりえない抽象物です。それをあらためて「純粋…

夏至

夏至というが、そんな感じがしない一日。紙焼き写真を整理。ブック オフ沼津リコー通り店へ行く途中の公園で遭遇したタコ型滑り台。やっ と見つけた滑り台。ウェブサイトに写真がある。最近塗り直したようだ。 先だって同様のタコ型滑り台を車中から望見。沼…

「隻眼の少女」

麻耶雄嵩『隻眼(せきがん)の少女』文藝春秋2010年2刷を読んだ。 《 どこか現世と隔絶したような雰囲気で、完全に女性と判るソプラノヴォ イスを除けば、全体的にニュートラルな少女だ。 》 20頁 《 右目は髪と同じく漆黒なのだが、左目がわずかに碧(みど…

「なんといふ空」

昨日の吉田篤弘『水晶萬年筆』には「影」がいろいろな場面に出ていた。 きょうになって気づいた、山崎ハコの歌「影が見えない」(『飛・び・ま・ す』1975年収録)。山崎ハコ作詞作曲。 《 あの日の私はどこ行った あの日の愛はどこ行った 影が見えない 》 …

「水晶萬年筆」

吉田篤弘『水晶萬年筆』中公文庫2010年初版を読んだ。昨日ふれた虫明 亜呂無『シャガールの馬』の一文がきっかけ。 《 駅前の広場のはずれのホテルの一室は、終日、水の音がしていた。 》 六篇から成る短編集の最初の一篇「雨を聴いた家」、冒頭一行。 《 水…

「馬」

昼前、龍沢寺の雲水が声を張り上げて歩いてゆく。最近復活した。 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BE%8D%E6%B2%A2%E5%AF%BA 友だちから昨日いただいた「馬」の絵を梱包をほどいて鑑賞。一昨日の ブログで話題にした絵だ。くれる、というので昨日もらった。…

「クロへの長い道」

二階堂黎人『クロへの長い道』双葉社1999年初版を読んだ。四篇を収録。 「縞模様の宅配便」「クロへの長い道」「カラスの鍵」「八百屋の死にざま」。 どれもミステリの題のパロディ。「縞模様の霊柩車」ロス・マクドナルド、 「シロへの長い道」ライオネル・…

「富士山の光と影」

昨日は会合の合間にデザイナーの友だちが二十年ほど前に描いていたスクラップ 帳を拝見。レタリング文字、娘さんのために描いたテディ・ベアやピーター・ラビ ットにふむふむ、いいね、と感想を述べ、ブルドッグ(ぬいぐるみ)がペアで軽く ステップを踏んで…

「ドアの向こう側」

NPO法人グラウンドワーク三島の年次総会。司会を仰せつかる。夜は交流会。 いろいろあって帰宅が遅れる。 http://www.gwmishima.jp/ 二階堂黎人『ドアの向こう側』講談社文庫2007年初版を読んだ。四篇を収録。 笑える。なにせ語り手は幼稚園に通う六歳の…

「風水火那子の冒険」

山田正紀『風水火那子の冒険』光文社文庫2006年初版を読んだ。四篇収録。謎を 快刀乱麻を絶つごとく解明する風水火那子(ふうすい・かなこ)。二十歳そこそこ の新聞配達員。 《 いかにも聡明そうな目をしている。ついでに言えば、ボーイッシュで、かなり 可…

「現代絵画入門」

昨晩沼津市の知人女性から電話。「田村セツ子さんて知っている?」「もちろん。 四十年前のサンリオ・ギフト文庫(幸福の花束)を持ってるよ」「今、田村さんと 飲んでるの。楽しい人ね」 田村セツコさんの絵は商業美術に大別されるのだろう。すなわち企業の…

「劇画 ヒットラー」

昨日の柏木博『ファッションの20世紀』は当然だが前世紀末までが対象。では今 世紀の特徴は? と考えるとユニクロに代表される廉価衣料の伸張、金融工学なる 怪物の跋扈と破綻(リーマン・ショック)だろうか。資本主義の終焉あるいは行き 詰まりを思わせる…

「ファッションの20世紀」

柏木博『ファッションの20世紀 都市・消費・性』NHKブックス1998年初版を 読んだ。 《 ファッションを手がかりとして、二○世紀という時代の思考や感覚、そして意識 がいったいどのようなものであったのかということを、検討することがテーマとなっ ている…

「砂男」

E・T・A・ホフマン『砂男』河出文庫1995年初版を読んだ。精神病者の物語か、と ひとくくりして片付けたくなる。併録されたS・フロイト「無気味なもの」を読むと そう簡単に片付けられない気分になる。 《 そこで結論は次のようになった。すなわち、実地…

「ペーター・シュレミールの不思議な物語」

昨日のホフマン『大晦日の夜の冒険』にこんなくだり。 《 彼の身のまわりには影がなかった。──影法師を曳いていないのだった。私はびっくり 仰天して後を追った。 「ペーター・シュレミール──ペーター・シュレミール!」 》 シャミッソー『ペーター・シュレ…

「くるみ割り人形とねずみの王様」

ジブリ美術館の「クルミわり人形とネズミの王さま展」開催にちなんで、E・T・A・ ホフマン『くるみ割り人形とねずみの王様』河出文庫1996年初版を読んだ。あれよあれよ の場面転換にあたふた。転がる石のよう。1816年の発表。二百年前かあ。 http://www.g…

「女たちの時間」

雨は止んでいるけどバスに乗って歯医者へ。治療は終わり。「死ぬまで大丈夫ですよ」と 言われるが……。帰りは小雨の中を徒歩。枇杷の実が熟しかけている。紫陽花は三分咲き。 帰宅してパソコンを開く。 《 では…長らく品切れ状態になっていました『レズビアン…

「書とはどういう芸術か」

昨日入梅が発表されたけど、きょうになって雨。雨で午後の予定がキャンセルされた。 床屋へ行ったり、ゆっくり過ごす。 石川九楊『書とはどういう芸術か 筆蝕の美学』中公新書1998年9刷を読んだ。自身の 「書」観と歴史観に貫かれ、一本筋が通っている。戦後…

「日本の思想」つづき

昨日購入した江戸川乱歩賞受賞作高野史緒『カラマーゾフの妹』講談社の帯に東野圭吾の一文。 《 原典『カラマーゾフの兄弟』も、きっと面白いに違いない! 》 え、読んでいないの? 巻末の選評から。 《 五人の選考委員の中で原典を読んでいないのは私だけで…

「日本の思想」

ブックオフ長泉店で三冊。高野史緒『カラマーゾフの妹』講談社2012年初版帯付、石川九楊『 書とはどういう芸術か』中公文庫1998年9刷、内田百ケン『東京焼盡』中公文庫1991年4刷帯付、計 一割291円。 内田樹のツイッター。 《 「今この国を考える」フェアに…

「ゴミと罰」

昨夕、沼津市のギャラリーのグループ展の打ち上げに招かれるれ、居合わせた白砂勝敏氏に ティム・インゴルド『ラインズ 線の文化史』左右社をお貸しする。彼の板に引く抽象文様の 描線が、この本でまざまざと浮かんだ。彼自身何の気なしに生み出されるそれは…

先週の本棚

きょうの毎日新聞には読書蘭「今週の本棚」がある。先週の「今週の本棚」を、今頃じっくり読んで いる。一週遅れの読書。興味を惹かれる本が並んでいる。モイセズ・ベラスケス=マノフ『寄生虫なき 病』文藝春秋への養老孟司の評から。 《 近代的な、衛生的…