2015-01-01から1ヶ月間の記事一覧

「 日本の伝統 」

岡本太郎『日本の伝統』光文社知恵の森文庫2006年2刷を読んだ。これはシビレル。元気 づけられた。岡本太郎、彼の作品には首をかしげるが、文章には首肯する。1956年の刊行。 今もって鮮度が落ちていない。名著だろう。省みれば、時代は進化していない、か。…

「 軽便鉄道 」

『本の雑誌』最新号の特集が保育社のカラーブックス。鉄道マニアがブログで話題に。 《 『軽便鉄道』と『楽しい軽便鉄道』の両方を持っていて、前者が「楽しくない軽便鉄道」 と呼ばれていることを本の雑誌で初めて知りました。 》 鉄道関連で持っているのは…

「 山伏地蔵坊の放浪 」

有栖川有栖『 山伏地蔵坊の放浪』東京創元社1996年初版を読んだ。七短篇からなる。 院号を地蔵坊と称する山伏が遭遇した奇妙な殺人事件の顛末を、スナック「えいぷりる」で 常連客に語る=騙る。一見誰が殺したか不明の事件を、地蔵坊が快刀乱麻を断つように…

「 さりげなくエレガント 」

午後、沼津市の金子工務店の、ほぼ出来上がっている清水町の個人住宅建設現場で、 写真家岡部稔さんと待ち合わせ。デザイナーの内野まゆみさんと三人で、写真を不織布に 印刷した作品などを運び込む。梱包を解き、各部屋に相応しい(部屋がグレードアップす…

「 晩秋挽歌 」

昨日の福島泰樹『弔い ──死に臨むこころ』ちくま新書では、彼が七年間住職を 務めていた沼津市柳沢妙蓮寺での生活と檀家とのふれあいが描かれている。 そこで書かれた一冊、歌集『晩秋挽歌』茱萸(ぐみ)叢書1974年を再び開く。 《 この集にあつめた作品は、…

「 弔い 」

福島泰樹『弔い ──死に臨むこころ』ちくま新書1997年初版を読んだ。 《 「ローマから汽車に乗って旅しながらパリに向かいます。」 》 28頁 《 あゝわれら自ら孤寂(こせき)なる発光体なり! 白き外部世界なり。 》 41頁 《 大きな存在の中におのれが溶解し…

「 白き日旅立てば不死 」

荒巻義雄『白き日旅立てば不死』ファラオ企画1992年初版を読んだ。元本は1972年に出たが、 1980年に出た決定稿となる角川文庫を底本にしている。1976年に出たハヤカワSF文庫はあるが、 これはハードカバーの単行本の大きめの字体で読んで正解。素晴らしく…

「 放置竹林伐採完了 」

朝からグラウンドワーク三島の松毛川再生事業で、河畔の放置竹林の伐採に気持ちよい汗を流す。 16日の続き。学生、社会人、二十名ほどが参加。日没には予定通り竹林伐採と粉砕が終了。 松毛川の三島市側の河畔1400メートルにわたって繁茂した竹林を、五年…

「 炎に絵を 」

ツイッターに以下の文が投稿された。 《 陳舜臣で一番好きな作品「炎に絵を」。「らしさ」の固まり。情味で泣けた国内推理の初体験。 》 猟奇の鉄人 陳舜臣『炎に絵を』文春文庫1977年初版を読んだ。1966年の発表。裏表紙の紹介から。 《 辛亥革命の資金を横…

「 怒りの菩薩 」

陳舜臣(ちん・しゅんしん)が亡くなった。気になっていた『怒りの菩薩』集英社文庫1985年 初版を読んだ。元本は1962年の刊行。日中戦争が終わり故郷台湾へ帰る新婚夫婦を待っていたのは、 新妻の中国で死んだと思われていた兄が帰郷し、時を置かず殺される…

「 小夜子の魅力学 」

泣き出しそうな曇天。郵便局で当選した年賀葉書で切手を受け取る、余った葉書を切手に交換。 原則年上の方に年賀葉書を出すので、数は年々減ってゆく。寒空を見上げる。雨が降ってきた。 ネットで氷山のひっくり返る画像を見る。そんなこともあるんだ。世界…

「 長浜鉄道記念館 」

種村直樹『長浜鉄道記念館』創元推理文庫1994年初版を読んだ。昨日の毎日新聞の追悼記事で 去年亡くなっていたことを知った。毎日新聞の記者だった。帯文から。 《 鉄道記念館で殺された男の手に浮世絵の断片が…… 十数年前、発見後消失した幻の廣重版画の原…

「 東洋の至宝を世界に売った美術商 」

昨日買った 朽木ゆり子『東洋の至宝を世界に売った美術商 ─ハウス・オブ・ヤマナカ─』 新潮文庫2013年初版を読んだ。山中商会とは。 《 『新潮世界美術辞典』にも、『日本美術史事典』にもまったく載っていないのである。 もちろん『広辞苑』にも、『日本国…

「 花と蛇 」

昨日ふれた団鬼六の官能小説『花と蛇 9 完結篇』富士見文庫1986年初版、 松田修の解説では笹岡作治の官能小説に団鬼六を対比させている。笹岡作治、 未知の作家だ。幻のゲイ小説家だった。 《 もちろんどちらが優で、どちらが劣かの判定は本稿の責任を超え…

「 肌ざわり 」

赤瀬川原平「肌ざわり」(『肌ざわり』中公文庫1983年初版収録)を題名に惹かれて読んだ。 見ること=視覚ばかりがまかり通るのにうんざりして、皮膚感覚=触覚の復権を考えていて、 これを読んだ。吉行淳之介、丸谷才一、河野多恵子の三氏が審査員を務めた…

「 古本極楽ガイド 」

岡崎武志『古本極楽ガイド』ちくま文庫2003年初版を読んだ。気軽に読めるようにと、 心がけて書かれている。気軽に読めるけれど、中身は満タン。次を読みたくなる。 《 初版本、稀覯本の類を、背を揃えて本棚にびっしり並べて悦に入るようなことは、 おそら…

「 花粉航海抄 」

雨。家こもり。思い立って『寺山修司詩集』ハルキ文庫収録「花粉航海抄」 のいくつかの俳句〇とほかの人の俳句、短歌を勝手に並列。平行、並行、交錯、 交響、反響、すれ違い、無縁。はてさて。 〇十五歳抱かれて花粉吹き散らす 少年や六十年後の春の如し 永…

「 寺山修司詩集 」

寺山修司『寺山修司詩集』ハルキ文庫2010年4刷を読んだ。詩、短歌、俳句の精選作品集。 瑞々しい果実を絞った新鮮な果汁。陳腐だけれどそのとおりの印象をあらためて抱いた。 甘美にして甘酸っぱく、諦観の苦味も少し……。舌を巻く巧さ。つい口ずさむ。 《 「…

「 呪いの谷/鈴の音 」

水木しげる『水木しげる貸本漫画傑作選6 呪いの谷/鈴の音』朝日ソノラマ1986年初版を 読んだ。目当ては未読の『鈴の音』1962年刊行。ネット注文して昨日届いた。送料込み840円。 これは凄い。怪奇・恐怖・幻想が渾然一体となってクラクラする。絵がじつに…

「 父が消えた 」

赤瀬川原平の著作は何冊も読んでいるけど、尾辻克彦の本は未読。尾辻克彦『父が消えた』 文藝春秋1981年初版を読んだ。芥川賞の表題作を含む五篇を収録。「父が消えた」、以前 読んだ気がしたが、なんとも地味な。芥川賞作はいくつか読んでいるけど、そうい…

「 目利きのヒミツ 」

昨日、野暮用の待ち時間に山田風太郎『厨子家の悪霊』ハルキ文庫1997年収録の「虚像淫楽」 を再読。内容はすっかり忘れていたが、傑作だわ。有栖川有栖の解説が説得力ある。 《 そして書かれたミステリには、「密室トリックの絶品」やら「かつてない意外な犯…

「 東京おぼえ帳 」

平山蘆江『東京おぼえ帳』ウェッジ文庫2009年初版を拾い読み。「序にかへて」より。 《 明治大正昭和へかけて二十五年もの間、縁あって都新聞といふ尤も東京人に愛された新聞社に つとめたおかげで、生まれ故郷の長崎よりも東京になじみが深くなり、ついつい…

「 火星年代記 」

京都の三月書房のウェブサイトを見ていて衝動的に注文した水木しげる『火星年代記』小学館 が届く。桜井文庫1978年を持っているけど、1962年に出た貸本のA5判の復刻版で読みたくなった。 http://web.kyoto-inet.or.jp/people/sangatu/ 挟み込みの「火星年代…

「 日本の響 」

横山勝也(尺八)・羽賀幹子(筝)『日本の響』音楽之友社1986年(カセットテープ)を聴いた。 以前と同じような印象。幽遠、幽玄、空を行く、首から上の音楽。クラシック音楽と同様の印象。 楽器の響きは素晴らしい。耳にする演奏は、あたかも夜空を尽十方…

「 先駆者 」

昨日の『オッド・ジョン』、教養小説ともコミューンの建設小説とも読める。ザ・ピーナッツの歌う 『 EPITAPH(墓碑銘)』が、コミューンの最期を想起させる。一吐息。 https://www.youtube.com/watch?v=0gx_F-HzZtk 作者オラフ・ステープルドンは1950年に亡…

「 オッド・ジョン 」

オラフ・ステープルドン『オッド・ジョン』ハヤカワ文庫1982年3刷を読んだ。深沢幸雄の 表紙絵目当てで買ったのだけれど、昨日の『対論 脳と生命』で森岡正博がこの本に言及。 《 そのメジャーな方向性は、人類自体が進化のプロセスによって、別の存在へと変…

「 脳と生命 」

世間ではきょうから仕事始めらしい。朝、友だちからメール。 《 こたつでうとうとしてました 》 これからが休日の人。 擦り減った後輪タイヤを交換した自転車を受け取り、ブックオフ長泉店へ。伊園旬 (いぞの・じゅん)『怪盗はショールームでお待ちかね』…

「 隔絶の陶芸家 」

昨日の原武史『滝山コミミューン1974』は、題名に惹かれて読んだのだが、 「コミューン」への言及はなされずじまいだった。1970年前後、コミューンは、 私たち若者の間では何かと話題になった言葉、現象だった。アメリカのヒッピー文化の 影響をまともに…

「 滝山コミューン 」

一昨日採りあげた赤瀬川原平『睡眠博物誌 夢泥棒』「あとがき」の一節。 《 この本の「悪夢十七番」の中で、私は夢と前夜の食事との関係を追求したが、この初夢の 前夜の食事はというと、一月一日、わが一家は滝山団地の某山某三郎のお宅で某況劇場の 某十郎…

「 笑う警官 」

マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー『刑事マルティン・ベック 笑う警官』角川文庫 2013年初版を一気読み。その昔、1972年発売の旧訳で読んで面白くて、シリーズ全十作を読んだ。 十冊の角川文庫は本棚に並んでいる。これは本国スウェーデンでは1968年に…