2020-01-01から1年間の記事一覧

『重力と恩寵』八(閑人亭日録)

シモーヌ・ヴェイユ『重力と恩寵』ちくま学芸文庫1999年5刷、最後の部分を読んだ。《 記号(シーニュ)と記号内容(シニフィエ)との関連が失われてしまった。記号と記号とをとり代えるにすぎぬ遊びごとが、増えている。遊びそれ自体として、 また遊びのため…

『重力と恩寵』七(閑人亭日録)

シモーヌ・ヴェイユ『重力と恩寵』ちくま学芸文庫1999年5刷を少し読む。《 信仰とは、知性が愛の光を受けるという体験である。 》 「知性と恩寵」 210頁《 知性の領域では、謙遜の徳とは、注意力にほかならない。 》 「知性と恩寵」 210頁《 真の謙遜は、自…

『重力と恩寵』六(閑人亭日録)

シモーヌ・ヴェイユ『重力と恩寵』ちくま学芸文庫1999年5刷を少し読む。《 だが、このあわれみを自然の中でじかに確かめてみるとなると、何も見ず、何も聞かず、何ものにも心動かさぬ者にならないかぎりは、そんなことができるとは思えぬ はずである。だから…

『重力と恩寵』五(閑人亭日録)

シモーヌ・ヴェイユ『重力と恩寵』ちくま学芸文庫1999年5刷を少し読む。《 善は、それを実行しなければ、体験とならない。 悪は、それの実行をみずからやめなければ、あるいはまた、実効してしまったのなら、それを悔い改めなければ、体験とならない。 》 「…

『重力と恩寵』四(閑人亭日録)

シモーヌ・ヴェイユ『重力と恩寵』ちくま学芸文庫1999年5刷を少し読む。《 必然。ものとものとのさまざまな関係、次には自分自身、さらには自分が心に抱いているさまざまな目的をも、この関係の一要素として含めつつ、見て確かめること。 行動はその結果とし…

『重力と恩寵』三(閑人亭日録)

シモーヌ・ヴェイユ『重力と恩寵』ちくま学芸文庫1999年5刷を少し読む。《 どんな小さな行いでも、いざ実行しようとするとわたしはしばしば非常な障害にぶつかるのだが、それもわたしに対して示された恩恵のひとつのしるしなのだ。 というのは、それだからこ…

『重力と恩寵』二(閑人亭日録)

シモーヌ・ヴェイユ『重力と恩寵』ちくま学芸文庫1999年5刷を少し読む。《 報いがどうしても要る、自分が与えたと等価値のものをぜひとも受けとらねばならぬという気持ち。だが、そういう気持をむりにおさえつけて、真空を生じさせておくと、なにか誘いの風…

『重力と恩寵』(閑人亭日録)

シモーヌ・ヴェイユ『重力と恩寵』ちくま学芸文庫1999年5刷を少し読む。じっくりゆっくり読むつもり。のっけからビリビリ来る。《 食料を手に入れるための行列。同じひとつの行ないでも、動機が高いときよりも、動機が低いときのほうが、ずっとやりやすい。…

年賀状(閑人亭日録)

昼前、源兵衛川中流部、三石神社脇の茶碗のカケラ、ガラス片を拾う。流水量が減ったので作業が楽。やや重くなって終了。ふう。一汗。 午後、両面手書きの年賀状を仕上げる。70枚。以前は100枚だったが、減ったものだ。投函。ふう。 男たちの旅路。 「Da…

『現代存在論講義 II』四(閑人亭日録)

倉田剛『現代存在論講義 II 』新曜社2017年初版、「第四講義 可能世界と虚構的対象」を読んだ。昨日同様、想像力の地上戦というより空想力の空中戦、といった風。 けれどもなんとも面白い=興味深い論だ。創造の隘路へ入った感もある。「あとがき」から。《 …

『現代存在論講義 II』三(閑人亭日録)

倉田剛『現代存在論講義 II 』新曜社2017年初版、「第三講義 可能世界と虚構主義」を読んだ。想像力の地上戦というより空想力の空中戦、といった風。 けれどもなんとも面白い=興味深い論だ。創造の隘路へ入った感もある。煩雑で引用する気が起きない。とい…

『現代存在論講義 II』二(閑人亭日録)

倉田剛『現代存在論講義 II 』新曜社2017年初版、「第二講義 種に関する実在論」を読んだ。《 この講義の中で日常言語(ないし自然言語)は、様々な誤謬を含むにもかかわらず、存在論的探求の不可避的な出発点であり、かつ十分に信頼できるリソースとして 扱…

『現代存在論講義 II』一(閑人亭日録)

倉田剛『現代存在論講義 II 』新曜社2017年初版、「序文」を読んだ。《 第一講義「中間サイズの物質的対象」では、われわれ周囲に見出されるような物質的対象(この机やこの花)の存在と本性に関する考察を行う。何らかの物質から できており、かつ時間のう…

『現代存在論講義 I』七(閑人亭日録)

倉田剛『現代存在論講義 I』新曜社2017年初版、「第五講義 唯名論への応答」を読んだ。《 実在論が普遍者としての性質の存在を主張する立場であるならば、唯名論はそうした性質の存在を否定し、個別者のみが存在すると説く立場である。〔中略〕 「実在論vs.…

『現代存在論講義 I』六(閑人亭日録)

倉田剛『現代存在論講義 I』新曜社2017年初版、「第四講義 性質に関する実在論」を再読。《 存在論者は「あるものがFである」という事実を成立させている原因(の一部)を特定するのではなく、むしろそうした事実が世界のいかなるカテゴリー的構造に もと…

『現代存在論講義 I』五(閑人亭日録)

倉田剛『現代存在論講義 I』新曜社2017年初版、「第四講義 性質に関する実在論」を読んだ。《 先行する講義において、われわれはいわば天下り的に、普遍者としての性質をカテゴリーとして導入した。〔中略〕 この第四講義では、性質をめぐる問いにおいて「…

『現代存在論講義 I』四(閑人亭日録)

倉田剛『現代存在論講義 I』新曜社2017年初版、「第三講義 カテゴリーの体系──形式的因子と形式的関係」を読んだ。《 存在論の最大の課題は、「何が存在するのか」という問いに一つのもっともらしい答えを提供することである。それは存在者のカテゴリーをリ…

『現代存在論講義 I』三(閑人亭日録)

倉田剛『現代存在論講義 I』新曜社2017年初版、「第二講義 方法論あるいはメタ存在論について」を読んだ。以下メモ。《 それどころか、存在論的探求の全体のうちに占めるメタ存在論(存在論の方法についての理論的考察)の割合はしだいに大きくなりつつある…

『現代存在論講義 I』二(閑人亭日録)

倉田剛『現代存在論講義 I』新曜社2017年初版、「第一講義」を読んだ。ワクワクする展開。以下メモ。《 存在論の諸区分 ここで考察されるのは以下の四つの区分である。 (a)領域的存在論(質料的存在論)/形式的存在論 (b)応用存在論/哲学的存在論 …

『現代存在論講義 I』(閑人亭日録)

倉田剛『現代存在論講義 I』新曜社2017年初版を少し読む。《 私は、ハイデガーとはまったく異なる仕方で、伝統的な存在論(形而上学)と向き合えることを本書の中で示したい。 》 序文 iv《 哲学は経験諸科学に敬意を払いながらも、それらとは一線を画す概…

多色摺り木版画の精華(閑人亭日録)

明治後半の國華社の高級美術雑誌『國華』が、多色摺り木版画の精華だと思っていたが、それに優るとも劣らない田島志一の審美書院があったとは、と今更ながら驚く。 京都山崎書店の「審美書院の本展」のネット情報で知った。《 木版印刷で驚くべき美術書を造…

審美書院田島志一最後の刊本(閑人亭日録)

奥付に「株式會社 審美書院代表者 編輯兼発行者 田島志一」とある『美術聚英 第十冊』明治四十四年十月十二日發行が、田島志一の最後の刊行本のようだ。 『緒形光琳筆四季花木圖屏風一隻』が多色摺り木版画で収録されている。解説は短い。全文。《 草木花葉…

『光琳派畫集 第三冊』つづき(閑人亭日録)

『光琳派畫集 第三冊』収録、尾形乾山最初の作品は『松及波圖菓子器』。田島志一の解説全文。《 乾山の作品中、奇想拓落、人意の表に出で、傭工の夢想だにも企及すること能はざるもの、本器の如き即ち其一に居れり、蓋し土佐派の奮型より轉化して光琳が装飾…

『光琳派畫集 第三冊』(閑人亭日録)

田島志一が編輯兼発行者の『光琳派畫集』全五冊の『第三冊』審美書院明治三十九年四月四日発行には尾形乾山が十五点、渡辺始興が九点で、他に画家二人の一点ずつが 収録されている。巻頭の尾形乾山の紹介文の抜粋。旧漢字は大方を現代漢字に改めた。カタカナ…

「浮游生物殺人事件」(閑人亭日録)

椿實「浮游生物(プランクトン)殺人事件」を『椿實全作品』立風書房1982年初版で読んだ。中井英夫の解説によると昭和二十五年五月『新青年』に掲載されたが、 ”あいにく探偵文壇では何もいわれた気配はない。” まあ、そうだな。香山滋の亜流のようだから。 …

「メーゾン・ベルビウ地帯」(閑人亭日録)

椿實「メーゾン・ベルビウ地帯」を『椿實全作品』立風書房1982年初版で再読。メーゾン・ベルビウとは”上野の杜の木下やみに埋もれたような陰気な安アパート”で、 ”扉の左肩にMAISON BELLE VUEと金文字の刻みが剥げかかってみえる。” MAISON BELLE VUEとは、…

「人魚紀聞」(閑人亭日録)

《 過日ちょいと必要あって、旧版の『椿實全作品』を取り出し、82年の発行だったと気づく。季刊『幻想文学』を創刊した年だ。どういう経緯で同書の発刊を知り 入手に至ったのか、記憶があいまい……中井さん経由かしらん? この月報には、ちょいと面白い記事…

田島志一、山本唯三郎(閑人亭日録)

第一次世界大戦で成金になった田島志一(1869 - 1920)と同様に成金になった人がいた。その後も同様。《 田島 志一(たじま しいち)は、日本の実業家。審美書院を設立し、『東洋美術大観』『真美大観』などを出版した 》 Wikisouce https://ja.wikisource.org…

『不思議な石のはなし』(閑人亭日録)

雑多な話の薄い本を読みたくなり、種村季弘『不思議な石のはなし』河出書房新社1996年初版を再読。古今東西の雑多な話が軽い筆致で綴られていて愉しい。 「贋の石」の結び。《 一目では判別がつかないが、署名文字の大きさや正字法を調べると、意外に幼稚な…

ジャニス・ジョプリン(閑人亭日録)

先月ネットでは三島由紀夫没後50年で賑わったけれど、その前の1970年10月4日に急死したロック歌手ジャニス・ジョプリンについては、ネット上で話題にならなかった。 二十歳の時ジャニス・ジョプリンの死を音楽雑誌で知り、愕然とした。前年友だちのアパート…