2020-04-01から1ヶ月間の記事一覧

『グレタ・ガルボに似た女』(閑人亭日録)

《 Maj Sjöwall: ‘Nordic noir’ pioneer, author of the Martin Beck series, dies aged 》 Guardian Books https://twitter.com/GuardianBooks/status/1255650707635466241 訃報に促されてマイ・シューヴァル Maj Sjöwall とトーマス・ロスの共著『グレタ・…

『ヘンリー・ライクロフトの私記』補遺(閑人亭日録)

ジョージ・ギッシング『ヘンリー・ライクロフトの私記』光文社古典新訳文庫2013年初版の訳者池央耿(いけ・ひろあき)は、年老いたライクロフトに合わせて私記を 古めかしい装いの漢字で訳している。冒頭三行目には”齷齪(あくせく)”。ルビが振ってあるから…

『ヘンリー・ライクロフトの私記』五(閑人亭日録)

ジョージ・ギッシング『ヘンリー・ライクロフトの私記』光文社古典新訳文庫2013年初版を読む。1903年46歳の時に刊行。同年死去。「冬の章」を読んだ。《 遠からず、人類は錠剤で栄養を摂取するようになるかもしれない。 》 234頁《 菜食主義を語った文章はど…

『ヘンリー・ライクロフトの私記』四(閑人亭日録)

ジョージ・ギッシング『ヘンリー・ライクロフトの私記』光文社古典新訳文庫2013年初版を少し読む。1903年46歳の時に刊行。同年死去。「秋の章」を読んだ。《 無性に本が読みたくなって、その衝動が何によるものかわからないこともあれば、ほんのささいなきっ…

『ヘンリー・ライクロフトの私記』三(閑人亭日録)

ジョージ・ギッシング『ヘンリー・ライクロフトの私記』光文社古典新訳文庫2013年初版を少し読む。1903年46歳の時に刊行。同年死去。「夏の章」を読んだ。《 日曜の朝である。美しく装った大地に、澄みきった空から軽やかな初夏の光が燦爛と降りそそぐ。庭の…

『ヘンリー・ライクロフトの私記』二(閑人亭日録)

ジョージ・ギッシング『ヘンリー・ライクロフトの私記』光文社古典新訳文庫2013年初版を少し読む。1903年46歳の時に刊行。同年死去。「春の章」を読んだ。《 本は図書館で借りて読めばいいのであって、自分の書棚に並べるまでもないと言う人々がいる。どうに…

『ヘンリー・ライクロフトの私記』(閑人亭日録)

ジョージ・ギッシング『ヘンリー・ライクロフトの私記』光文社古典新訳文庫2013年初版を少し読む。1903年46歳の時に刊行。同年死去。《 だいたい、物書きが世に認められないことを根に持つ筋がどこにあろう。仮に不朽の名作と言われるほどのものを書いたとし…

不具合解消(閑人亭日録)

昨日接続の不具合でブログが更新できず、きのうの記事を今朝に持ち越し。不具合に振り回され、夕方はお通夜へ。コロナ禍で東京方面の親族は見えない。簡素。 今月亡くなる人が続く。 ネット、うろうろ。《 急じゃないし、要らないんじゃね?という不要不急な…

22日のブログ 「惹き込まれる」「弾かれる」(閑人亭日録)

ポルトガルの歌謡音楽ファド Fado の歌手パトリシア・ロドリゲス Patricia Rodrigues のCD”Ternura”を聴く。クール・ビューティ、滲む情炎。ぐっと来る。 https://www.discogs.com/Patr%C3%ADcia-Rodrigues-Ternura/release/5123700 最後の歌「Cantigas de…

「愛する」「惹かれる」(閑人亭日録)

「愛する」ということがわからない。素敵な女性にたいして「愛する」という気持ちは湧かない。子どもの頃から素敵な女性には「惹かれる」「惹きつけられる」という 気持ちしか湧かなかった。「愛する」とは主体的能動的な働き。美術作品でも同様に「惹かれる…

『レヴィナス』十(閑人亭日録)

熊野純彦『レヴィナス 移ろいゆくものへの視線』岩波書店1999年初版、「第II部 移ろいゆくものへの視線 ─レヴィナスにおける〈時間〉をめぐって──」 「第三章 主体の綻び/反転する時間」を読んだ。《 とするならば、線形的ではない関係の時間性、分断され反…

『レヴィナス』九(閑人亭日録)

熊野純彦『レヴィナス 移ろいゆくものへの視線』岩波書店1999年初版、「第II部 移ろいゆくものへの視線 ─レヴィナスにおける〈時間〉をめぐって──」 「第三章 主体の綻び/反転する時間」を途中まで読んだ。理解し難くはあるが、愛撫(性愛)に関しては、自…

『レヴィナス』八(閑人亭日録)

熊野純彦『レヴィナス 移ろいゆくものへの視線』岩波書店1999年初版、「第II部 移ろいゆくものへの視線 ─レヴィナスにおける〈時間〉をめぐって──」 「第二章 時間と存在/感受性の次元」を読んだ。これまた難解。精緻精妙微妙なことばの綾、陰翳。粗忽者に…

『レヴィナス』七(閑人亭日録)

熊野純彦『レヴィナス 移ろいゆくものへの視線』岩波書店1999年初版、「第II部 移ろいゆくものへの視線 ─レヴィナスにおける〈時間〉をめぐって──」 「はじめに──移ろいゆくものへ」を読んだ。《 そうであるとすれば、時間について考えるとは移ろいゆくもの…

『レヴィナス』六(閑人亭日録)

熊野純彦『レヴィナス 移ろいゆくものへの視線』岩波書店1999年初版、「第一部 所有することのかなたへ」「第五章 歴史の断絶──声ではない声に〈耳〉を 澄ませること──」を読んだ。「第一部」読了。 友だちが来たので井上陽水 ”Make-up Shadow”で反響板のあ…

『レヴィナス』五(閑人亭日録)

熊野純彦『レヴィナス 移ろいゆくものへの視線』岩波書店1999年初版、「第一部 所有することのかなたへ」「第4章 裸形の他者」を読んだ。《 他者たちが存在する世界においてのみ、〈ことば〉が芽ばえ、世界が現にそうであるような意味をもつ。 》 82頁《 こ…

『レヴィナス』四(閑人亭日録)

熊野純彦『レヴィナス 移ろいゆくものへの視線』岩波書店1999年初版、「第一部 所有することのかなたへ」「第4章 裸形の他者」を途中まで読んだ。平易な文章、 だけれど、私の常識を覆されるレヴィナスの視点、思考におろおろ。読む手が止まる。読み流せな…

『レヴィナス』三(閑人亭日録)

熊野純彦『レヴィナス 移ろいゆくものへの視線』岩波書店1999年初版、「第一部 所有することのかなたへ」「第3章 所有と労働」を読んだ。《 私の眠りはどこへも移りゆくことがない。私は〈私〉のなかにとざされ、眠りは眠りの内部にとどまっている。 》 38…

『レヴィナス』二(閑人亭日録)

熊野純彦『レヴィナス 移ろいゆくものへの視線』岩波書店1999年初版、「第一部 所有することのかなたへ」「第一章 問題の設定」を読んだ。《 ないしは、〈私〉が存在すること、存在しつづけることを、もはや「あたりまえ」のこととは見なさず、存在すること…

『レヴィナス』(閑人亭日録)

熊野純彦『レヴィナス 移ろいゆくものへの視線』岩波書店1999年初版を少し再読。刊行されてしばらくして読んだ記憶。「まえがき」冒頭から惹き込まれる。《 ある思考が「強靭な」思考といわれるのは、どのような場合であろうか。 》 5頁《 強靭な思考が、し…

『1968[3]漫画』三(閑人亭日録)

四方田犬彦/中条省平・編『1968[3]漫画』筑摩書房2018年初版、漫画を読んだ。再読が多い(内容は忘れているが)。漫画21篇のうち『ガロ』掲載が11篇。 記憶にない『ガロ』掲載漫画は佐々木マキ「ヴェトナム討論」、大山学「化石の森」、淀川さんぽ…

『1968[3]漫画』二(閑人亭日録)

昨日購入した四方田犬彦/中条省平・編『1968[3]漫画』筑摩書房2018年初版、四方田犬彦「漫画に何が起こったか」を読んだ。《 1964年に『ガロ』が創刊され、それを追うように66年の暮に『COM』創刊が続いた。この二誌には、白土三平が『カムイ…

『1968[3]漫画』(閑人亭日録)

徒歩で本屋へ行き、四方田犬彦/中条省平・編『1968[3]漫画』筑摩書房2018年初版を受けとる。つりたくにこ『彼等』1970年が収録されているので購入。 https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480016638/『彼等』は、青林工藝舎版でもイタリア版…

『地に呪われたる者』六(閑人亭日録)

フランツ・ファノン『地に呪われたる者』みすず書房1969年初版(原書は1961年刊)、訳者の一人鈴木道彦の「解説」は火傷するほど熱い。《 もしファノンという男をひと言で定義するなら、彼はこの戦闘への誘いを、その行動という行動、活字という活字から発散…

『地に呪われたる者』五(閑人亭日録)

フランツ・ファノン『地に呪われたる者』みすず書房1969年初版(原書は1961年刊)、「五 植民地戦争と精神障害」を読んだ。フランス軍のすさまじい拷問とそれに 起因する精神障害の例には言葉を失う。《 アルジェリアにおいて用いられた拷問の方法のあるもの…

『地に呪われたる者』四(閑人亭日録)

フランツ・ファノン『地に呪われたる者』みすず書房1969年初版(原書は1961年刊)、「四 民族文化について」を読んだ。《 今日われわれがこのように勝利を確信して抵抗することができるのは、これまでに多くの原住民が「もうたくさんだ」と叫んだからだ、多…

『つりたくにこ作品集 FLIGHT 』(閑人亭日録)

昼前、去年イタリアの出版社から出た故つりたくにこさんの漫画集『FLIGHT』が、ご主人から郵送されて届く。 https://www.fandangoeditore.it/shop/marchi-editoriali/coconino-press/coconino-gekiga/flight/ 早速開封。青林工藝舎から2010年に出た元本A5…

『地に呪われたる者』三(閑人亭日録)

フランツ・ファノン『地に呪われたる者』みすず書房1969年初版(原書は1961年刊)、「三 民族意識の悲運」を読んだ。《 民族意識は、民衆全体がその胸にふかく秘めた願望の整然たる結晶でもなく、民衆動員の生み出す最も具体的直接的成果でもなく、所詮は単…

『地に呪われたる者』二(閑人亭日録)

フランツ・ファノン『地に呪われたる者』みすず書房1969年初版(原書は1961年刊)、「二 自然発生の偉大と弱点」を読んだ。透徹した分析と展望。驚嘆。《 われわれは今、都市と地方ととの古典的対立の前に立たされているのではない。これは植民地主義の利益…

『地に呪われたる者』(閑人亭日録)

カミュ『ペスト』のオラン~アルジェリア関連でフランツ・ファノン『地に呪われたる者』みすず書房1969年初版(原書は1961年刊)を読み始める。新刊で購入。 半世紀後に読むとは。 ジャン=ポール・サルトルの激越な「序文」に息を呑む。じつに正鵠を射てい…