2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『平均律クラヴィーア曲集』第二巻(閑人亭日録)

昨日話題のバッハ『平均律クラヴィーア曲集』第二巻をスヴャトスラフ・リヒテルのピアノ演奏(1973年録音)のLPレコード盤三枚で聴く。屹立し、弾み、響き合う 音楽、精神。なんと現代的な。 怪しい雲行きなので朝一で郵便局へ不在票を持って行く。帰宅。…

『精神のフーガ』十(閑人亭日録)

中村雄二郎『精神のフーガ 音楽の相のもとに』小学館2000年2刷、「第十四章 さえずる機械│ドゥルーズ&ガターリ」を読んだ。クレー『赤のフーガ』について。 http://blog.livedoor.jp/a_delp/archives/1038583172.html《 すなわち、ほかならぬ「赤のフーガ」…

『精神のフーガ』九(閑人亭日録)

中村雄二郎『精神のフーガ 音楽の相のもとに』小学館2000年2刷、「第十三章 楽興の弁証法│テオド-ル・アドルノ」を読んだ。アドルノの『楽興の時』から始まる。《 このエッセーは冒頭から、次のようなまわりくどい、誌的なことばで始まっている。 ベートー…

『精神のフーガ』八(閑人亭日録)

中村雄二郎『精神のフーガ 音楽の相のもとに』小学館2000年2刷、「第十一章 源泉としての音楽│ニーチェ」を読んだ。《 このように、『悲劇の誕生』におけるニーチェの論法の一つは、造形性を本質とするアポロン的芸術に対して音楽性を本質とするディオニュソ…

『精神のフーガ』七(閑人亭日録)

中村雄二郎『精神のフーガ 音楽の相のもとに』小学館2000年2刷、「第九章 ラモーと『ラモーの甥』│ディドロの音楽論とその周辺」を読んだ。《 しかし、この『覚書』においてすでに、ディドロ独自の考え方が見えはじめている。ただし、両者の違いは内容的なも…

『精神のフーガ』六(閑人亭日録)

中村雄二郎『精神のフーガ 音楽の相のもとに』小学館2000年2刷、「第七章 普遍的ハーモニーを超えて│デカルトの音楽論とその周辺」を読んだ。よくわからなかった。《 これらの叙述のなかでいちばん重要なのは、音楽の目的をずばり〈情念の喚起〉にあるとした…

『精神のフーガ』五(閑人亭日録)

中村雄二郎『精神のフーガ 音楽の相のもとに』小学館2000年2刷、「第五章 『神曲』の世界像と音楽│ダンテ」、「第六章 〈眼と手の人〉と音楽│レオナルド・ダ・ ヴィンチ」を読んだ。どちらも興味深い。《 このように、『神曲』「地獄篇」は、まさに非音楽的…

『精神のフーガ』四(閑人亭日録)

中村雄二郎『精神のフーガ 音楽の相のもとに』小学館2000年2刷、「第四章 小鳥との対話│アシジのフランチェスコ/メシアン」を読んだ。じつに興味深い。《 こと音楽に関して〈リズム的音楽〉とは、厳密には「反復や2の倍数からなる拍節や等分を嫌うもの、自…

『精神のフーガ』三(閑人亭日録)

中村雄二郎『精神のフーガ 音楽の相のもとに』小学館2000年2刷、「第三章 魂のリズム論│アウグスティヌス」を読んだ。じつに興味深い。《 このようなアウグスティヌスの時間論は、一般に固定して捉えられている時間のいわゆる〈長さ〉や〈リニアー性〉を、本…

『精神のフーガ』二(閑人亭日録)

中村雄二郎『精神のフーガ 音楽の相のもとに』小学館2000年2刷を少し読む。 バックグラウンド音楽にファドのコンピレーションCD『THE ROUGH GUIDE TO FADO』2004年を流していて、ふっと耳をそばだてる歌唱に出会った。JOANA AMENDOEIRA。 なんだCDをもっ…

『精神のフーガ』(閑人亭日録)

中村雄二郎『精神のフーガ 音楽の相のもとに』小学館2000年2刷を少し読む。《 ところでこの新しい〈知の冒険〉に際して、全体の表題は、思い切ってこれを、「精神のフーガ」と名づけた。それというのも、表現の形態についても、たとえ ゆるやかな仕方である…

豆本『MUSINGS & MEMORIES』(閑人亭日録)

(昨日更新を忘れていた。あれあれ。きょうの記事の下に昨日の記事を掲載。) 昨日並べたミニチュア作品、楽しい。ミニチュアといっても豆本にはさほど執着がない。大事にしているのは、森永製菓の豆本。ハイクラウンチョコレートに フェアリー・カードが付…

『ラディカル・ミュゼオロジー』本文(閑人亭日録)

クレア・ビショップ『ラディカル・ミュゼオロジー』月耀社2020年初版、副題”つまり、現代美術館の「現代」ってなに?”を昨日読了。 https://urag.exblog.jp/240214379/《 もちろん時代区分を放棄するすることは不可能であると論ずる者もいるだろう。歴史上の…

『ラディカル・ミュゼオロジー』(閑人亭日録)

クレア・ビショップ『ラディカル・ミュゼオロジー』月耀社2020年初版を読んだ。副題”つまり、現代美術館の「現代」ってなに?”。 https://urag.exblog.jp/240214379/ 百頁足らずの短い本文だが、切込みはじつに鋭く深い。しかし、不意の用事がいくつも入り、…

『スタンダード』 (閑人亭日録)

女性詩人・歌人のエリさんから恵投にあずかった新歌集『スタンダード』六花書林2020年初版を読んだ。 http://eri-aphrodite.sakura.ne.jp/ 長谷川富市氏の意を尽くした解説に掲載されていない歌を。 蝶になり三日羽はばたく命より月下美人の一夜をどうぞ 待…

『述語的世界と制度』十二 (閑人亭日録)

中村雄二郎『述語的世界と制度』 岩波書店1998年初版、「補章 場所から述語的世界へ」を読んだ。クライマックスの後の、じつに簡潔、明晰な章だ。再読終了。だが、 また読むことになりそう。《 翻って顧みるに、われわれの知識の体系とはこの具体的一般者の…

『述語的世界と制度』十一 (閑人亭日録)

中村雄二郎『述語的世界と制度』 岩波書店1998年初版、「第5章 自己・言語・生命」後半を読んだ。多岐にわたる論述が結びで収斂してゆく様は、圧巻。《 こうしてレヴィナスは、超越的な他へと向かう経験、故郷を捨てる〈アブラハム〉的な経験に出掛けるよう…

『述語的世界と制度』十 (閑人亭日録)

中村雄二郎『述語的世界と制度』 岩波書店1998年初版、「第5章 自己・言語・生命」前半を読んだ。《 その点で、講演「言語の悲劇」においてイヨネスコ自身が語ったことばは思い起こすに値しよう。いわく、《スミス夫妻もマーチン夫妻も、もはや〔なにか意味…

『述語的世界と制度』九 (閑人亭日録)

中村雄二郎『述語的世界と制度』 岩波書店1998年初版、「第4章 他者・暴力・時間」後半を読んだ。《 ここでいう善意と忍耐とは、さらにいえば、自己の行為の勝利に同時代人として立ち会うのをやめることであり、そのときにめざされる未来は、〈私の死と関わ…

『述語的世界と制度』八 (閑人亭日録)

中村雄二郎『述語的世界と制度』 岩波書店1998年初版、「第4章 他者・暴力・時間」前半を読んだ。《 このようなアウグスティヌスの時間論は、一般に固定してとらえられている時間のいわゆる〈長さ〉や〈リニアー性〉を、本来はむしろ〈分散的〉性格を持った…

『述語的世界と制度』七 (閑人亭日録)

中村雄二郎『述語的世界と制度』 岩波書店1998年初版、「第3章 ノモス・制度・法のアポリア」後半を読んだ。《 なお、それらとは一応別個に、内容からいって私が注目してきているものに、生物発生学でいう〈拘束〉commitment の概念がある。これは、発生の…

『述語的世界と制度』六 (閑人亭日録)

2016年12月26日のブログに昨日と同様な記述がある。《 シニフィアン、シニフィエは昔からよく目にしているが、未だによくわからない。このくだりでも混乱。理解できるまでには 時間がかかるだろう。 》 https://k-bijutukan.hatenablog.com/entry/20161226/p…

『述語的世界と制度』五 (閑人亭日録)

中村雄二郎『述語的世界と制度』 岩波書店1998年初版、「第2章 カオス・無意識・述語性」後半を読んだ。が、理解できたか? できたとは言えない。シニフィアンと シニフィエという用語が、私には未だによくわからない。簡単なことだけれど。特に129頁の引用…

『述語的世界と制度』四 (閑人亭日録)

中村雄二郎『述語的世界と制度』 岩波書店1998年初版、「第2章 カオス・無意識・述語性」を途中まで読んだ。じつに刺激的。でも理解は半分程度かな。なので なかなか進まない。それだけじっくり読んでいることになるのかな。《 この〈自然の点で〉と〈認識…

『述語的世界と制度』三 (閑人亭日録)

中村雄二郎『述語的世界と制度』 岩波書店1998年初版、「第1章 序論」後半を読んだ。《 この述語的同一性による思考は、主語的同一性にもとづく通常の論理によって統一されている現実を問いなおし、惰性的に統一された総体に亀裂を与え、それを ばらばらに分…

田島志一の審美書院の本  (閑人亭日録)

昼前、女性二人が来訪。ご近所の料亭登喜和のお弁当で昼食。四方山話の後、場所を三階へ移して田島志一が編集兼発行人で刊行した審美書院の豪華美術画集、『文人画 三大家集』1909年刊、『光琳派画集 第一巻』1903年刊、『圓山派画集 上巻』1907年刊などをお…

『述語的世界と制度』二 (閑人亭日録)

中村雄二郎『述語的世界と制度』 岩波書店1998年初版、「第1章 序論」を少し再読。始めからビリビリ来る。《 さて、物理学において場(field)というのは質点(material point)の反対概念せあるが、それに対して哲学においては、場所というのは主体の反対概…

『述語的世界と制度』 (閑人亭日録)

中村雄二郎『述語的世界と制度』 岩波書店1998年初版を少し再読。本文を読む前に「あとがき」を読む。《 早くから体系的な思考をめざす人たちもいるけど、それは、私のめざす途ではなかった。思考の体系化というようなものは、むしろ〈分散化〉を通して、次…

ピラーニャ・レーベル (閑人亭日録)

モーリス・エル・メディオーニ MAURICE EL MEDIONI のCD”cafe ORAN”1996年を久しぶりに聴く。 https://www.reconquista.biz/SHOP/cdpir1045.html《 1928年アルジェリア・オラン生まれ。オランと首都アルジェで活躍したユダヤ系ピアニスト、モーリス・エル…

カルガモ、ツバメは忙しい(閑人亭日録)

東京新聞、伊藤氏貴「文芸時評」から。《 しかし声高に叫ばれたポストモダン文学も鳴りを潜めてしまった。精神的恋愛は去っても、承認欲求にまみれた現代社会で「自我」はまだしぶとく生き延びている。 今は近代からまだ見ぬ次の時代への端境期だ。 ここにコ…