2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

『ピカソは本当に偉いのか?』(閑人亭日録)

西岡文彦『ピカソは本当に偉いのか?』新潮新書2012年初版を再読。帯の惹句が煽る。《 「あんな絵」に/どうして/高値がつくの?/みんなホントに/わかってるの?/アート界の身勝手な/理屈をあばいた/「目からウロコの/芸術論」 》《 ミダスの魔力は酒…

芸術とは(閑人亭日録)

昨日の続きで月刊『太陽』平凡社1993年11月号、特集「現代美術入門講座」を開く。表紙は村上隆の『B.P.〈バカボンのパパ〉』。いかにも。ざっくり読んだが、以前 読んだ時と同様、最初の横尾忠則「美術館は直感で見ろ」だけに共感。川村記念美術館での感想…

三十年経つと(閑人亭日録)

昨日の拙ブログで”三十年経つと”云々と書いた。月刊『太陽』平凡社1991年8月号、特集「現代美術のアトラス」を開いた。表紙は舟越桂の木彫『森へ行く日、1984』。 構成・文 谷川渥「現代美術のトポグラフィー」で作品が紹介され、椹木野衣・編集『日本美術全…

『アヴィニョンの娘たち』『歓』(閑人亭日録)

パブロ・ピカソ『アヴィニョンの娘たち』1907年作、油彩画、243.9×233.7cm https://artmuseum.jpn.org/mu_avinyon.html 上條陽子『歓』1989年作、混合技法、22.7×16cm この画像はないので参考に拙サイトの画像を張っておく。 http://web.thn.jp/kbi/kamijo.h…

『存在の耐えられない軽さ』九(閑人亭日録)

ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』集英社1996年7刷、「第VI部 大行進」「第VII部 カレーニンの微笑」を読み、読了。うーむ、深い小説だ。1984年刊行。 千野栄一「訳者あとがき」から。《 一九二九年チェコスロヴァキアのモラヴィアの中心都市ブル…

『存在の耐えられない軽さ』八(閑人亭日録)

ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』集英社1996年7刷、「第V部 軽さと重さ」を読んだ。《 中部ヨーロッパの共産主義体制は、犯罪者によって作り上げられたもの以外の何物でもないと考える人たちは、根本的真実を見逃している。犯罪的体制を作ったの…

『存在の耐えられない軽さ』七(閑人亭日録)

ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』集英社1996年7刷を少し読んだ。 昼前、近くの佐野美術館で催されている渡辺省亭展へ友だちと行った。予想通りフツーの日本画。欲しいと思った作品は一点もなかった。友だちも同じ感想。無料券で 行ったが、入場料…

『存在の耐えられない軽さ』六(閑人亭日録)

ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』集英社1996年7刷を少し読んだ。《 いや、彼女のドラマは重さのドラマではなく、軽さのであった。サビナに落ちてきたのは重荷ではなく、存在の耐えられない軽さであった。 》 144頁《 別ないい方ををすれば、媚態…

『存在の耐えられない軽さ』五(閑人亭日録)

ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』集英社1996年7刷を少し読んだ。《 二人は語り合ったことばの論理的な意味をはっきりと理解したが、これらのことばを通して流れる川のせせらぎの意味をききもらした。 》 103頁《 そういう連中は誰でも人差し指が…

『存在の耐えられない軽さ』四(閑人亭日録)

ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』集英社1996年7刷を少し読んだ。《 「前景は分かりやすい嘘、そしてバックは分かりにくい真実」 》 75頁《 ロシア帝国のこれまでのいかなる犯罪も巧みなものいわぬ陰にかくれて行われた。五十万人のリトアニア人の…

『存在の耐えられない軽さ』三(閑人亭日録)

ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』集英社1996年7刷を少し読んだ。《 彼はパルメニデースの磁界にいた。存在の甘い軽さを楽しんだのである。 》 38頁《 土曜日と日曜日には存在の甘美な軽さが未来の深淵の中から彼に近づいてくるのを感じた。月曜日…

『存在の耐えられない軽さ』二(閑人亭日録)

ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』集英社1996年7刷を少し読んだ。《 でもどのようなお祭りも永遠に続くわけにはいかない。 》 34頁 昼過ぎ、グラウンドワーク三島事務所で会合。午後三時帰宅。傘をさすほどでもない小雨。源兵衛川最上流部、いずみ…

『存在の耐えられない軽さ』(閑人亭日録)

ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』集英社1996年7刷を少し読んだ。小説を読むのは久しぶり。なぜこの本を本棚の奥から苦労して引張り出したのか、数頁で 理解した。《 だが重さは本当に恐ろしいことで、軽さは素晴らしいことであろうか! 》 8頁 味…

『翡翠』(閑人亭日録)

一昨日の立原杏所筆『蘆花翡翠圖』から小原古邨の『翡翠』へ連想がつながる。季刊『版画芸術』135号阿部出版2007年、「特集 知られざる木版画絵師 小原古邨/小林かいち」では特集頁冒頭を小原古邨『翡翠』が飾る。その木版画『翡翠』は、前世紀末に某画廊で…

『一笑両断』(閑人亭日録)

佐藤正明『一笑両断』東京新聞2021年7月27日初版帯付を近くの本屋で受けとる。東京新聞に掲載された政治風刺まんが。 https://www.tokyo-np.co.jp/isshouryoudan 帯の惹句。《 まんがで斬る政治 》《 鬼才が描く激動期の日本! 》 新刊を注文するくらいだか…

何もしなかった一日(閑人亭日録)

夕食後、夜が来た。ま、当たり前だ。明るい間、雨音を耳にしながらグダグダと過ごす。午後、お布団に横になることの気持ちよさ。知らぬ間に時は過ぎ。飽きてパソコンを開けば会合の伺いメール。まったく、用事は向こうからやってくる。お呼びでない災難も向…

『日本哲学の最前線』三(閑人亭日録)

山口尚(しょう)『日本哲学の最前線』講談社現代新書2021年初版、「第四章 身体のローカル・ルールとコミュニケーションの生成──伊藤亜紗『手の倫理』」を読んだ。《 仮に哲学一般が普遍性をめざす傾向をもつとすれば、伊藤は「別の仕方の」哲学を試みてい…

『日本哲学の最前線』二(閑人亭日録)

山口尚(しょう)『日本哲学の最前線』講談社現代新書2021年初版、「第二章 人間は自由でありかつ無自由である──青山拓央『時間と自由意思』」を読んだ。《 すべてはただ生じる。いわば無主体的な出来事が起こるのみである。そこには「する/される」の区別…

『日本哲学の最前線』(閑人亭日録)

山口尚(しょう)『日本哲学の最前線』講談社現代新書2021年初版を開く。 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000354109 「第一章 共に生きるための言葉を探して──國分功一郎『中動態の世界』」から。《 以上のように、〈能動態と中胴体の対比〉…

『熊楠と幽霊』三(閑人亭日録)

志村真幸(まさき)『熊楠と幽霊』集英社インターナショナル新書20121年初版を読了。熊楠の業績にかかわる人物像を描いている。思想の骨格には立ち入らない。そこが、 安藤礼二『熊楠 生命と霊性』河出書房新社2020年初版とは大きな違い。 近所の飲食店は、…

『熊楠と幽霊』二(閑人亭日録)

志村真幸(まさき)『熊楠と幽霊』集英社インターナショナル新書20121年初版を少し読んだ。《 一八九七年一一月二六日の日記に、「ブロンプトン墓場を見る」とあり、(引用者・略)ここはピーター・ラビットのゆかりの地としても知られます。生みの親の ビア…

『熊楠と幽霊』(閑人亭日録)

志村真幸(まさき)『熊楠と幽霊』集英社インターナショナル新書2021年初版を少し読んだ。《 ところが、熊楠の文書はたいへん読みにくいのです。(引用者・略)古風な文体、漢字や漢文の多用、難解な言い回しと、きわめて難度が高いのです。 挫折してしまっ…

『猫楠』二(閑人亭日録)

水木しげる『猫楠 南方熊楠の生涯』角川文庫1996年初版を読んだ。文を読んだだけではわからなかった実生活が、よくわかった。説得力のあるマンガだった。 長崎原爆忌。午前十一時過ぎ黙祷。 強風の吹くきょうは晴れから雨へとコロコロ変わる。家こもり。 ネ…

『猫楠』(閑人亭日録)

水木しげる『猫楠 南方熊楠の生涯』角川文庫1996年初版、前半を読んだ。四百頁ほどなので、一日で読み終わると思いきや、内容が詰まっていて、なかなか進まぬ。 吹き出しが読ませる。《 すると/おめえ/”研究”という/ことに名を/かりた/”学問の遊び人”/…

休読日(閑人亭日録)

暑い一日。手紙と葉書を認めて、一日が終える。 ネット、うろうろ。《 「山の日」が11日から8日に移動したのね。(山が動いた) 》 藤原編集室https://twitter.com/fujiwara_ed/status/1423560093094666242《 いや、ホントに、「糊でくっついてはがれずに困…

『熊楠 生命と霊性』十(閑人亭日録)

安藤礼二『熊楠 生命と霊性』河出書房新社2020年初版、「「宇宙模型」としての書物」を読んだ。《 稲垣足穂は、宇宙そのものを自身の表現の主題としたという点で、またその宇宙を決して人間というレベルにまで引き下げず、人間をはるかに超えた超現実の次元…

『熊楠 生命と霊性』九(閑人亭日録)

安藤礼二『熊楠 生命と霊性』河出書房新社2020年初版、「生命と霊性」を読んだ。圧巻。《 熊楠がなによりも守りたかったのは、「神社」という人為的な建造物ではなく、「神森」という非人為的な自然環境であった。 》 202頁《 林業が盛んだった紀州では、す…

『熊楠 生命と霊性』八(閑人亭日録)

安藤礼二『熊楠 生命と霊性』河出書房新社2020年初版、「生命と霊性」を少し読んだ。論述の静かな熱気に圧倒される。理解したつもりが理解してねえや、となる。 ちょっと引用。《 鈴木大拙は、自らの思想の形成期と完成期をアメリカで過ごした。 》 168頁《 …

『熊楠 生命と霊性』七(閑人亭日録)

安藤礼二『熊楠 生命と霊性』河出書房新社2020年初版、「生命と霊性」を少し読んだ。《 南方熊楠は、このように語る法龍から、「法身(ほっしん)」という概念を学んだのだ。森羅万象あらゆるものは根源としての「一」なるものから生まれ、それゆえ、 根源と…

『熊楠 生命と霊性』六(閑人亭日録)

安藤礼二『熊楠 生命と霊性』河出書房新社2020年初版、「生命と霊性」を少し読んだ。《 すなわち、西田幾太郎には同級生である友、鈴木大拙が、柳田國男には年長者である師、南方熊楠がともに存在し、独創的な近代日本誕生のための重要な触媒となる ような役…