2024-08-01から1ヶ月間の記事一覧

『人生を愛するには』二(閑人亭日録)

中村真一郎『人生を愛するには』、「VI 日本人のあり方について」を読んだ。以下抜き書き。《 王朝物語に対する私の傾倒は生涯変らず、七十歳を過ぎて、このジャンルの発生から終焉に至るまでを、列伝体に数十篇について、世界文学のなかに位置付けて論じる…

『人生を愛するには』(閑人亭日録)

本棚で出合った中村真一郎『人生を愛するには』文藝春秋一九九五年四月一日 第一刷を少し読んだ。昨日の女性たちの笑い話は心底楽しかった。その影響でこの本が目に留まったのだろう。人生を愛するには。不覚にもそんな大事なことが思い浮かばなかった。「I …

女子会に男一人(閑人亭日録)

お昼前、内野まゆみさんに同伴して、裾野市水窪の小さなお食事店「草の実」へ。女子会(六十代~八十代の六人)に男一人がなぜか参加。久闊を叙す。美味しい料理と溌剌とした女性たちの弾む会話に時の経つのを忘れる。午後四時過ぎ帰宅。ほどなくして雨が降…

「質屋の女房」(閑人亭日録)

『日本短篇文学全集 第41巻』筑摩書房 昭和43年1月12日第一刷発行を開き、安岡章太郎の短篇「質屋の女房」を半世紀ぶりかな、再読。記憶に鮮やかな結末にあらためて舌を巻く。奥野健男の解説の冒頭。《 『質屋の女房』は、文学の玄人(くろうと)筋の批評家か…

台風はどこだ?(閑人亭日録)

台風情報が流れる中、降ったり止んだりの合間を縫って郵便局とスーパーへ。スーパーの米の棚は空っぽ。へえ~。午前11時気温27.6℃。湿気が凄く、十分足らずの外出だけど、汗~。 昼寝。午後3時気温27.0℃。白砂勝敏さんの一昨年の作品、流木を基にした木彫作…

『アートの力』再読・五(閑人亭日録)

マルクス・ガブリエル『アートの力──美的実在論』堀之内出版2023年4月28日 第一刷発行の再読を進める。最終章「補論 懐疑のアート、アートの懐疑」を読んだ。一市井人にはわかりにくい。とりあえず結びから。《 私は哲学という営みを、概念を使った芸術的実…

『アートの力』再読・四(閑人亭日録)

マルクス・ガブリエル『アートの力──美的実在論』堀之内出版2023年4月28日 第一刷発行を少し再読。 「アートと〈権〉力」を読んだ。《 われわれの経験が作品の自己形成に参加するそうしたやり方のことを、一般に美的経験と呼ぶ。美的経験の問題は、私たちを…

『アートの力』再読・三(閑人亭日録)

マルクス・ガブリエル『アートの力──美的実在論』堀之内出版2023年4月28日 第一刷発行を少し再読。 「自律性、ラディカルな自律性、オリジナリティ」を読んだ。《 アートを構成されたもの(コンポジション)として捉えることは、アートの自律性に正しいやり…

『アートの力』再読・二(閑人亭日録)

マルクス・ガブリエル『アートの力──美的実在論』堀之内出版2023年4月28日 第一刷発行を少し再読。 「パフォーマンスとしての解釈」を読んだ。《 話がここまで進んだところで、次のような疑問が湧くかもしれない。解釈や想像は、そこでどんな役割を果たして…

『アートの力』再読(閑人亭日録)

マルクス・ガブリエル『アートの力──美的実在論』堀之内出版2023年4月28日 第一刷発行を少し再読。ベルナール・ジェニエス「序文」。《 アート作品とは何よりも、固有の意味を自ら生み出す、ユニークで異なる作品である。作品に没入したり、作品を拒絶したり…

『縄文論』雑感(閑人亭日録)

昨日再読を終えた安藤礼二『縄文論』作品社。凄い熱量に気圧されながらの読書だった。熟慮の末の論述で、そこには迷いがない。最終章「まれびと論(四次元の塔)」は、岡本太郎の思想と作品「太陽の塔」が語られていたが、ふむふむ凄いな、と感心しつつ、先…

『縄文論』再読・八(閑人亭日録)

「まれびと論」(四次元の塔)を読んだ。《 岡本太郎とは一体何者だったのか。その答えは、「太陽の塔」とは一体何を表現しようとしたものだったのかを解き明かしていくことによって、徐々にあきらかにされていくだろう。 》300頁《 しかしながら、「美術史…

『縄文論』再読・七(閑人亭日録)

「まれびと論」(まれびとと祝祭──呪術の論理)を読んだ。《 まれびとは海の彼方にある異界にして他界、「妣(はは)が国」(母たちの国)から、時を定めてやってくる神にして人である。 》236頁《 そうしたまれびとへの信仰は、人類の古層にまでさかのぼるの…

『縄文論』再読・六(閑人亭日録)

「南島論」を読んだ。《 吉本隆明は、列島に生まれた国家が変容を重ねながら、この現代に至っても、古来以来の、いまだ呪術宗教的な共同の幻想であることを明らかにした。そrれでは、なぜ『共同幻想論』に引き続いて、来たるべき「南島論」が書きあげられな…

『縄文論』再読・五(閑人亭日録)

「縄文論」を読んだ。《 資本主義も全体主義も、近代的な国家を内側から乗り越えて拡大する、超近代的な帝国を目指していた。世界に覇を唱える帝国を目指す国家同士の闘いは必然的に全面化し、同時にその帰結としての破滅もまた全面化することになる。その危…

『縄文論』再読・四(閑人亭日録)

「場所論」後半を読んだ。《 西田が逢着した困難は、一体どのような点にあったのか。(引用者・略)真に実在するのは「意識」なのである。しかし、西田はそれだけでは満足しないのだ。真に実在するのは、「主客未分」にして「主客合一」の「純粋経験」である…

『縄文論』再読・三(閑人亭日録)

「場所論」前半を読んだ。《 そうした、通常の言語、通常の感覚では到達不可能な絶対の地点こそが、文学の「象徴主義」が目指すべきゴールであった。 西田幾多郎と小林秀雄は、「象徴主義」において交錯していた。小林がランボーに由来する「言葉の錬金術」…

『縄文論』再読・二(閑人亭日録)

「草原論」を読んだ。なんとも重厚な論述だ。気になる箇所を抜き書き。《 古典時代の秩序が解体されるなかで「近代」が形づくられていくのだ。(引用者・略)私の意図としては、「近代」はもはやヨーロッパだけにとどまらず、この極東の列島をも巻き込んだ「学…

『縄文論』再読(閑人亭日録)

床に積み上がった本の中に安藤礼二『縄文論』を見い出し、手にする。作品社二〇二二年一一月一〇日第一刷発行。後半には付箋がぎっしり。読んだ記憶はかすかにあるが、内容はすっかり忘れている。読みなさい~と誘われているようだ。「序」から攻めて来るわ…

島田志一と審美書院展(閑人亭日録)

「足るを知る」。この言葉を時折思う。まだ足りないと思うな、と自省を込めて自制する。蒐集していると、あれもこれも、と欲しいモノが現れている。金鉱脈を発見したようなもので、掘れば(探せば)まだ金鉱石が出てくる・・・。金鉱石なら品質に変わりはな…

再発見~差異発見(閑人亭日録)

昨日の東京新聞、「秋元雄史・東京芸術大名誉教授に聞く」という記事の一文。《 ネットワーク化されて物質感がなくなった現代では、「ノスタルジックなところが、見る人を引きつけるのでは」という。 》 私の蒐集物(古本、美術作品等々)は、物質そのモノば…

「彼等」(閑人亭日録)

昨晩の雷雨と地震(神奈川県)を受けて、つりたくにこのマンガ『彼等』を『1968〔3〕漫画』筑摩書房二〇一八年五月一五日 初版第一刷発行で何度目かの再読。解説の中条省平「1968──〈破壊的性格の時代〉」から。《 つりたくにこの『彼等』と楠勝平の『臨…

肉筆画~複製木版画(閑人亭日録)

小原古邨や川瀬巴水らの木版画絵師の原画をもとにした複製木版画(新版画)と、古典絵画の複製木版画(国華社、審美書院)と何が違うのだろう。新版画は下絵(原画)をことさらに問題にしないが、古典絵画の複製木版画は、絵画の複製としか見られない。木版…

「現代アート派群像」(閑人亭日録)

東京都現代美術館「日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション」 https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/TRC/ が某ブログで一部紹介されている。 https://mmpolo.hatenadiary.com/entry/2024/08/07/215806《 これを見れば現代日本で人気のある作家が誰…

無名にひとしい人たちへの紙碑(閑人亭日録)

昨日読了した宮本常一『日本民衆史1 開拓の歴史』が反響している。昨日引用紹介した結びの文章。《 いずれにせよ、明治以来の国内開拓はその大半が政策からはみだして十分政府が保障し得ない人びとを便宜的に帰農せしめ、政策の破綻を救おうとしたところに…

『開拓の歴史』五(閑人亭日録)

宮本常一『日本民衆史1 開拓の歴史』未來社一九六三年六月三〇日第一刷発行を読了。以下メモ。《 こうして山の中で生活をたてる者が焼畑をおこなったほかに、なお焼畑をいとなむ者は多かった。それは水田や定畑をつくっているだけでは食料の不足する人びと…

『開拓の歴史』四(閑人亭日録)

宮本常一『日本民衆史1 開拓の歴史』未來社一九六三年六月三〇日第一刷発行を少し読んだ。《 中世末までの合戦を、歴史年表によって見ていくと、大きな合戦は農閑期に多いようだし、小さい合戦は秋の刈入れ前が多いようである。農民が丹精をこらしてつくっ…

『開拓の歴史』三(閑人亭日録)

宮本常一『日本民衆史1 開拓の歴史』未來社一九六三年六月三〇日第一刷発行を少し読んだ。《 つまり、関東南部に水田の増大していったのは奈良時代以降と見られるのであり、条里田のすくないこともそれに起因していよう。 》96頁《 このように見てくると、…

『開拓の歴史』二(閑人亭日録)

宮本常一『日本民衆史1 開拓の歴史』未來社一九六三年六月三〇日第一刷発行を少し読んだ。《 つまり、弥生式時代に水田耕作のおこなわれたところは低湿地で、しかもそこがしばしば洪水におそわれるような土地で、人が居住するには多くの危険のともなうよう…

『開拓の歴史』(閑人亭日録)

宮本常一『日本民衆史1 開拓の歴史』未來社一九六三年六月三〇日第一刷発行を少し読んだ。これは『甘藷の歴史』に続く「双書 日本民衆史」全12巻の第二回配本。この二冊を新刊で購入。それから六十年経って読んだ。冒頭。《 人間の歩いてきた道は遠くはるか…