意識通信

 森岡正博「意識通信」ちくま学芸文庫読了。これは凄い本だ。従来のコミュニケーション論が情報通信であるのに対して、コミュニケーションそのものを目的とした意識通信という概念を提唱している。
「コミュニケーションには、<情報のキャッチボール>図式によって把握されるべき「情報通信」の側面と、<場の形成と変容>図式によって把握されるべき「意識通信」の側面があるのだ。」
  1992年の初期パソコン通信段階で展開される第一章 意識通信、第二章 匿名性のコミュニティ、第三章 意識交流場という論の流れは十四年後、私の脳を刺激してやまない。古びるどころか、その先見性に驚く。これほどワクワクしたのは珍しい。
「私は『意識』というものを、個人の壁を超えて流れ出ることのできる流動体として捉えた。」
 主観━客観、自己━他者という西洋哲学の枠組みに違和感を覚え、それに代わる枠組みを模索していた私には、これで窓が開かれ世界がやっと更新されるという思いが深い。かいつまんで紹介すると重要な本質を逃してしまう。
 後半の「ドリーム・ナヴィゲイター」は近未来のネット社会を描いている。最終部「我々はここから、『論理の可視化』という実験に入ってゆく。」SFファンタジーだ。奔流するイメージ。オドロイタ。
 2002年の「文庫版あとがき」には、
「この『意識通信モデル』は、残念ながら学問的な検討や批判の対象とされてこなかった。文庫版の新しい読者が、これをどのように受け取ってくれるのか、私は興味がある。」
 今年最も興奮を覚えた本ですわ。興味ある人は全文公開されているのでどうぞ。→「意識通信」(リンク項)
 ブックオフでちょっと気になって払った105円。大当たりだあ。ネットでは出合えない体験。

 ブックオフ長泉店でチャールズ・ブコウスキーを二冊。「酔いどれ紀行」河出書房新社1995年初版帯付、「尾が北向けば・・・」新宿書房2001年初版帯付、計210円。