まだ死ねない

 昨日はその後気が向いてブックオフ沼津店へ自転車を走らせる。おお、半額セールじゃ。北方謙三「明るい街へ」1996年初版函帯付、倉知淳「壷中の天国」角川書店2000年初版帯付、文庫棚から芦原すなお「雪のマズルカ創元推理文庫2005年初版、北森鴻「花の下にて春死なん」講談社文庫2006年11刷、佐野洋子「私が妹だったとき/こども」福武文庫1990年初版、新谷識(しんたに・しき)「ヴェルレーヌ詩集殺人事件」中公文庫 1993年初版、峠三吉「原爆詩集」青木文庫1969年17刷、松浦理英子「おぼれる人生相談」角川文庫2001年初版、松尾由美ジェンダー城の虜」早川文庫1996年初版、計450円。一冊五十円だとつい余計な本まで買ってしまう。

 伊藤昭久「チリ交列伝」ちくま文庫を読了。副題が「古新聞・古雑誌、そして古本」。いつしか聞こえなくなった「ちり紙交換」の声。その集荷場で事務をした人の回顧録。現在は古書店「古書いとう」の主人。それ以前には山梨シルクセンター出版部(現サンリオ)にいて本を出していたとあっては期待が高まる。・・・期待どおりだった。集荷場に出入りする怪しげな人々の人生模様が活写されている。そこはまるで駅かホテルのよう。出久根達郎の解説の結び、
「本書はそのタイトルの如く、ひと筋縄ではいかぬ、まことに複雑な内容の奇書であり、後世に残すべき風俗資料の好著であると、声を大にして言う。」
 に同感。本文のこんな箇所、
「ごまんといる女のいない男には、トルコ嬢は不可欠なのだから、トルコ嬢の方は性犯罪防止技能士といった名をつけて、認めるべきだ。」221頁
 にも同感。午後三嶋大社へ一人で初詣。例年どおりにお御籤を引いたが例年どおり恋愛に縁遠い・・・ああ。ここにも女のいない男がいるぜい。しかしトルコ嬢にも縁が無い。他のこともいいこと書いてない。今年は私にとって人生の踊り場か。踊ってやろうじゃないかい(違う〜)。

 美術館へ来る前にブックオフ長泉店へ寄る。山田風太郎「戦中派闇市日記」小学館2003年初版、ヘンリー・ジェイムズ「金色の盃 上・下」講談社文芸文庫2001年初版、計315円。「金色の盃」が嬉しいねえ。三十年余り前、「使者たち」を読んで感銘を受けた。そのH・ジェイムズの「後期三大傑作」のこれが平成元年に出たとき高価なので見送っていた。それが今、210円で読めるとは。生きていてよかった。読了するまでは死ねない。ってこことは、ずっと死ねないということ。あれえ。