三酔人経綸問答

 昨夜は夜風に誘われてお散歩。ぶらぶらと歩く先にはブックバンク三島店。100円の創元推理文庫から三冊。ジュール・ヴェルヌ「必死の逃亡者」1972年初版、S=A・ステーマン「六死人」1984年初版、ヘンリ・セシル「メルトン先生の犯罪学演習」1970年7刷、どれも美本、計300円。いつもの店に寄りギネスビールを飲んで帰宅。

 斎藤充功(みちのり)「刑務所を往く」ちくま文庫2003年を拾い読み。第三章「死刑の真実」が重い。元刑務所長の話。
「それとなんですな、紙一重の差とはいえ、死刑と無期の両者を見ていると、人が人を裁くことの矛盾をつくづく感じますな。」
 殺人被害者とその遺族そして死刑囚の親族。それぞれに深い傷を負わせる・・・。

 中江兆民「三酔人経綸問答」岩波文庫読了。これが1887年(明治二十年)に出版されたとは。120年も前の政治〜国際問題を論じた本だとは信じがたいほどの新鮮さだ。鮮度が全く落ちてない。驚いた。こういう本を名著というのだろう。本文(訳文)百頁余りだから政治家、政治評論家そしてネット右翼にまず読ませたい。平易な訳文だから理解に困らない。洋学紳士、豪傑の客に南海先生は言う。
「わが国がいよいよ特産物を増し、物資を豊かにするならば、国土が広く、人民のいっぱいいる中国こそ、われわれの大きな市場であって、尽きることなく湧く利益の源泉です。この点を考えずにただ一時的に国威発揚などという考えにとりつかれて、ささいな言葉のゆき違いを口実にして、むやみに争いをあおりたてるのは、ぼくから見れば、まったくとんでもないゆき方です。」
「こういうわけで二つの国が戦争を始めるのは、どちらも戦争が好きだからではなくて、じつは戦争を恐れているために、そうなるのです。」
 なんか北朝鮮との関係を120年前に見通されているようだ。紳士豪傑南海三者三様の論述がじつに興味深い。政治のあるべき姿が根本的なところで論じられている。桑原武夫は解説で書いている。
「兆民はここに政治の実践家というより、むしろ政治の哲学的文学者としてあらわれている。」

 ブックオフ長泉店で三冊。「このミステリーがすごい! 2007年版」宝島社2006年初版200円、105円棚から静岡新聞社・編「今は昔 しずおか懐かし鉄道」静岡新聞社2006年初版、宮崎市定論語の新しい読み方」岩波書店同時代ライブラリー1997年4刷、計410円。