違和感

 毎日新聞昨夕刊、川村湊文芸時評 1月」のお題は「『罪』に見合う『罰』とは」。冒頭、
「『異邦人』が『よそもの』、『眼球譚』が『目玉の話』、『嘔吐』が『むかつき』という訳題で新訳されている。少々の違和感を感じないわけでもないが、これも文学受容の一つの流れとして受け入れざるをえないだろう。」
 受け入れたくないわあ。
ドストエフスキーの『罪と罰』は、新訳でも『罪と罰』である。」
 中村文則「最後の命」(群像)に関して川村は書いている。主人公の旧友の
「彼の自殺も、もしも彼が捕まり、死刑になったとしても、それは到底彼の犯した『罪』に見合う『罰』とはならないのだ。/現代の日本の状況は、ドストエフスキーの生きていた時代よりも、明らかに後退している。『罪』と『罰』が絶対的に釣り合っていないことを知っていたから、彼は『罪と罰』を書いた。しかし、現在の日本人は『罪』に見合うだけの『刑罰=厳罰』を法官僚たちと一緒に呼号するのである。一人のいたいけな少女の死に対して『死刑』を、母子殺しの未成年者にもそれに"釣り合う"『極刑』を、と。」
「『罪』の有無についても、私たちは簡単に人を裁くことができない。ましてや『罰』を与えるということは、人間の感情や社会の情緒に軽々に委ねるようなものではない。」
 副題は「俗情との結託を拒否して」。困難な課題だ。

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