官能の天獄

 昨日はフォルクローレ歌手アタワルパ・ユパンキ(1908-1992)の誕生日なので、夜CDを聴いた。LPレコードは四枚持っているけど、プレイヤーをまだ買い替えてない。いつ買えることやら。フォルクローレといっても若い人はわかるだろうか。ましてやユパンキは。CDの解説で高場将美は書いている。
南アメリカの音楽を代表する最高の巨匠とたたえられ、『歩く大地』と呼ばれる偉人」
「アタワルパ・ユパンキの中には南アメリカのすべての風景が生きているのだ。」
 これ以上のほめ言葉はちょっと見当たらないなあ。彼の歌とギターからは湿気の無い土地の風を感じる。いつだったか十数年前、銅版画の深沢幸雄氏と知り合った頃、氏の作品からユパンキを連想した旨の手紙を送ったところ、以前千葉の店でユパンキを聴いて感銘した。ユパンキを連想されるとは驚いたといった返事が届いた。
 三十年あまり前、青森県弘前市にあった喫茶店ユパンキを訪ねた。小さな店だった。ユパンキの歌とギターはどこかに打ち忘れてきた心情を照らし出す夜の焚き火のような趣がある。中村とうようは言う。
ユパンキフォルクローレという山の頂上であり、フォルクローレユパンキに尽きる。」

 ネット注文した宇野亜喜良「アイデアスケッチ」トムズボックスが届く。小さくて軽いスケッチ画集だけれど、一瞥イチコロ。いやあ、たまりませ〜ん。お嬢さまから悪女?まで官能の天獄。巻を措く能(あた)わずだけど、すぐに巻末、また最初から見直す。