「地獄の読書録」

 小林信彦「地獄の読書録」集英社文庫読了。それから拾い読み。1959年から1969年の間に出版されたミステリ、SF小説を中心にした書評集。なかなか参考になる。勉強になったこともある。例えば悪漢小説。
「悪漢小説というのは悪漢が出てくる小説ではありません。(略)これは、"一人の人物の活躍・行動を追うことによって社会の裏面を描く小説"のことです。ただ、その主人公が悪人の場合が多いので、悪漢小説と呼ばれるのです。主人公が世間知らずの娘の場合だってあるわけです。」1966年の項より
 へえ。知らなかった。時代小説について。
「一方の極に司馬遼太郎の『竜馬が行く』があり、もう一方の極に風太郎忍法があり、その間に無数の時代小説、チャンバラものがちらばっている、というのが筆者の考え方である。」1968年の項より
 SF小説でJ・G・バラードが紹介されていないのが不思議だったが、「小説世界のロビンソン」新潮社1989年の「第二十六章」で書いている。
「ぼくは五○年代SFの熱狂的な読者であったが、ニュー・ウェーヴのころから興味を失ったというか、ついていけなくなった。」
 それでかあ。「終章」にはこんな言葉。
「それにしても、手をつけていない <面白そうな本> は、まだ、あまりにも多い。」
 多すぎると私は思うけど、105円棚で目にすると手がのびる。きょうのブックオフ長泉店では手がのびなかった。