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 銅版画家深沢幸雄氏からの手紙に侘しいことが記されていて気になり、昨晩やっと電話することができた。綺麗な娘さんの声に続いて深沢氏が出る。なんとお元気な声。足が少し悪くなったので外出が控えめになっただけで、創作力は衰えていない。今までに銅版画は1102点制作制作したが、21世紀になって始めたガラス絵は500点にならんとする。ほお〜、へえ〜。凄い持続力だわ。ガラス絵を初めて買った人が文芸・美術評論家の粟津則雄。やはりねえ。他に秋の大回顧展などの話。

 昼過ぎ、自転車でブックオフ長泉店へ行く。安東能明(よしあき)「強奪箱根駅伝」新潮社2003年初版帯付、絲山秋子沖で待つ文藝春秋2006年初版、京極夏彦「続巷説百物語角川書店2001年初版帯付、須賀敦子「霧のむこうに住みたい」河出書房新社2003年初版帯付、日明恩(たちもりめぐみ)「そして、警官は奔(はし)る」講談社2004年2刷、田中芳樹「緑の草原に……」「ブルースカイ・ドリーム」東京書籍1998年初版帯付、谷川俊太郎「しりとり」いそっぷ社1997年初版帯付、西尾維新「ニンギョウがニンギョウ」2005年初版函付、計9冊 945円。自転車で行ってよかったわ。半額棚から落ちてきたばかりだった。受け止めてやったぜえい。他にも惹かれる本があったけど、きょうはこれだけ。「強奪箱根駅伝」は以前人に贈ったが、また所持したくなった。「霧のむこうに住みたい」は、帯には霧にけぶる屋敷林の写真。外すと室内のテーブルの写真。洒落ている。坂部隆芳の風景画を連想する。

 百目鬼恭三郎「解体新著」文藝春秋1992年、読了。俎上にあがった本は彼の博覧強記を背景に柔軟にして透徹した視点によって解体されるが、その手さばきはじつに見事。内実を一気に切り出している。その鮮やかな切断面に舌を巻く。正統な本の批評とはかくあるものか。
 「読売文学賞と日本文学大賞という二大文学賞を受賞した、ドナルド・キーン『百代の過客』も、もしこれが日本人の著作だったら、賞は愚か、活字にすることさえむずかしかったろう。」
 堂々と書くその強気にたじろいでしまう、小心者の読者。あ、オレか。明日に続く。