横尾忠則〜谷内六郎

 昨夜十時からのNHKテレビ「人間ドキュメント」は画家横尾忠則の特集。彼の1960年代のポスターや本の装丁は好きではないけど凄いと思った。画家に転向してからは面白いとも何とも感じなかった。Y字路も観たけど、どうもねえ。その彼が70歳になって開眼というのか、怪人二十面相と少年探偵団の絵画を描きだした。それで想起したのが四半世紀前の彼の文。「谷内六郎幻想記」に書かれていたもの。
「谷内さんを知るずっと前からぼくは谷内さんの大ファンであった」
「少年時代のスゴイ絵に感銘した」
「コワイ絵であったが何んともいえぬ魅力があった」
「谷内さんのコワイ絵はぼくの本性でもあった」1981年5月2日
 彼は紆余曲折を経て谷内六郎と共通の世界を描くところまでやっと来た。
 コワイ絵といえば、初公開の味戸ケイコさんの銅版画三点をコワイと言う人がいる。コワイけどスゴイ絵だ。谷内六郎の少年時代の絵に通じる。

 正午、知人に誘われて熱海市の澤田政廣記念美術館の建物を見に行く。前を通り過ぎるだけで見逃していたが、ちゃんと観ると造りが凝っていてなかなか興味深い。いやあ、気づきませんでしたわ。伊豆山で蕎麦を食し、熱海の路地裏の古いしもた屋を改装した喫茶店でコーヒーを飲む。そこで彼の知人と若い女性二人に出会う。獣道は一緒だ。熱海駅前にお出迎えの芸者さんがいるので、その昔私が一目惚れした芸者さんの名前を彼が聞くと、そばにあったチラシを手渡された。にっこり並んだ三人の美人芸者の一人が彼女だった。まあ、やはりねえ。昔の名前で出ているとは……。