雪月花の宴

 北一明氏の北京展をまとめた小冊子に1992年11月、湯河原の女性演歌歌手の邸で催された「雪月花の宴」の写真が掲載されている。十数人のその席では当然若輩者の私が末席に。そのせいで花を添えた芸者さんたちや女性たちの裏面を垣間見てしまった。背中を一筋の冷たい水が流れるようだった。そんな裏側を全く見せなかったのがその若い芸者さんだった。隙の無い見事な立ち振る舞いと言動に圧倒されてしまった。その彼女が今や熱海の看板芸者に。感慨深いわ。

 村上春樹海辺のカフカ 上」読了。読ませる文章だ。私設図書館の司書の言葉。
「私たちはこれまでどこからの補助も受けず、指図も受けず、自分たちの考えるやりかたでものごとを進めてきましたし、これからもそうするつもりでいます」第19章
 わがK美術館と同じだ。
「想像力を欠いた狭量さ、非寛容さ。ひとり歩きするテーゼ、空疎な用語、簒奪された理想、硬直したシステム。僕にとってほんとうに怖いのはそういうものだ。」第23章
 自分もそう思うが、果たして実体はそうなのか、時々自問し考えてしまう。もうひとつ怖いのは高所。
「そこには孤独が柔らかな泥のように積もっている。水の層をくぐり抜けてきたわずかな光が、遠い記憶の名残りのようにあたりを白く照らしている。」
 これは好きな表現。

 ブックオフ長泉店で二冊。「ディケンズ短編集」岩波文庫1991年15刷、文藝春秋編「洋画ベスト100」文春文庫1996年2刷、計210円。
 なんと「海辺のカフカ 下」第32章に「チャールズ・ディケンズ」が出てきたよ。