まあメイド

 昨夜は本は手付かず、LPレコードを聴きまくる。ジャズ・ベーシスト鈴木勲「BLOW UP」1973年録音からサザンオールスターズ「NUDE MAN」、中森明菜藤圭子、吠えまくるテナー・サックスのキング・カーティスまで思いつき目につくままにかける。うーん、黒い円盤からこの空間に照射される漆黒の輝き。底知れぬ情念の粘り強い引力と磁場。たまらんわ。虹色に輝く軽薄なCDからは決して出てこない分厚い音の層。この雑音まじりの音こそ、聴きたかったもの。パソコン画面で読む字よりも紙媒体=本で読む活字のほうが心にぐっと沈み込むのと同じだ。やはり私はアナログ派だ。
 見回せば床から天井まで本。床にある本は積まずに雑然と並べてある。表紙を眺めてあれこれ品定め。鈴木勲の解説に九鬼周造「『いき』の構造」からの引用があったのでそれにしようかな。手が伸びたけど、手にしたのは早見裕司メイド刑事(デカ)」GA文庫2006年。
「悪党ども、冥途(メイド)が待ってるぜ!」
 が決め科白らしい(裏表紙による)けど、テレビ東京の深夜ドラマ「怪奇大家族」に出てきたスナック「まあ冥土」を連想する人もいるだろう。第一話を読んでみた。けっこう面白い。御主人様のオーディオ趣味は
「マークレビンソンのアンプ、タンノイのスピーカ、ノッティンガム・アナログ・スタジオのアナログ・プレーヤ・スペースデッキ……オーディオの中でも名器といわれる逸品を中心とするコンポーネント
 参ったなあ。聴いたことない。中森明菜「難破船」が出てくる。参ったなあ。
 こんなことしていてああ、二月が去ってゆく。