都市・ガラスノ牙

 昨晩、イトーヨーカドー三島店へ徒歩で行き、スニーカーとご飯茶碗を買った。ここ何日か茶碗を探していたのだけれど、気に入ったものが専門店になくてヨーカドーのフェアにあるとは。ワカラナイものだ。帰宅してコーヒーを淹れる。自宅には豆しかないので電動ミルで挽いて淹れる。砂糖は元々なくミルクは切れているのでブラックで飲む。ジャズレコードをかける。50年前のタル・ファーロウのギターとエディ・コスタのピアノの絡みに体がスイングする。ジャズは都市の地下室で生まれた独特の都市音楽だと思う。
 昨日の日録で触れた阿部良雄「言葉・都市・自然──森有正先生に」を読む。パリのこと。
「無理して自動車をもたなくても、一定の時間まで待てばバスが出て安全に家の近くまで運んでくれる、という何でもないことのうれしさは、人間の住む場所として組織された都市の一員であることの素朴なよろこびであり、やがて『採算性』の名のもとにそういうバス路線もことごとく廃止されるような時が来れば、都市は全くの『砂漠』と化するでしょう。」「西欧との対話」1974年収録
 毎日新聞昨夕刊にタレントのダニエル・カールへのインタビュー記事。
「今、日本人に一番必要なのはモノじゃない。時間だ。(略)何にも不足のないこの国で、時間だけが足りない。」

 朝刊に文化庁芸術選奨の記事。大臣賞に舞踊家振付家の勅使河原三郎の名前。舞踊「ガラスノ牙」で受賞。先だっての日曜夜の教育テレビで放送された「ガラスノ牙」には目が釘付けになった。彼が演出も手がけたこの舞踊では四トンのガラスが使われたという。床にリングほどの大きさに敷き詰められたガラス層の上で軽々と踊る勅使河原らを観て舌を巻いた。足の下でガラスがバリバリと割れ、破片が飛び、けれども踊り手は肉体の気づかざる運動能力を縦横に発揮、こちらの目を覚醒させた。オドロイタ。舞踊集団カラスのこの前の公演も印象深かったが、今回は割れるガラスの上で踊るという前代未聞の仕掛け。脱帽。都市の舞踊だ。再放送を期待。

 ブックオフ長泉店で「現代フランス語辞典 第2版」白水社2001年4刷、殿山泰司「三文訳者の無責任放言録」ちくま文庫2000年2刷、計210円。