両手をひろげる

 角川春樹「朝日のあたる家」思潮社2006年を読んだ。秀句は前半に集中していると思った。何が秀句か、門外漢の私には断言できるはずもないけど。気に入った句はこんなもの。

  夕鶴を見て戻りけり白魚(しらお)汁

  菜の花やとなりの町に灯がともる

  シクラメン静かに夕日あつめゐる

  春雨の日暮里駅で待ち合はす

  花散るや影の中にも影のあり

  花散るやもとより花に愁ひなし

  花あればこの世に詩歌立ちあがる

 などなど。私好みの句であって、すべてが秀句であるとはいえないと思う。寺山修司の秀歌「海を知らぬ少女の前に麦藁帽のわれは両手をひろげていたり」へのオマージュもある。

  麦藁帽少女は両手ひろげおり

 ブックオフ長泉店で六冊。「完訳 グリム童話集1・3・4・5・6・7巻」ちくま文庫2005年2006年初版、計630円。第2巻が無い。挿絵が面白いので購入。