拡大するジャズ

 昨日の毎日新聞夕刊に音楽家キップ・ハンラハンKip Hanrahanのインタビュー記事。来日してたのか。知らなかった。来日公演に行くかと聞かれれば……行けないと答えるだろう。
「僕はいつも怒ってる。社会から疎外されていることへの怒りとかフラストレーションを音楽で語りたいって気持ちがある。」
「僕はブロンクス育ちで、涙の流し方も、涙を流す筋肉の動かし方さえ知らない。それが、言葉がなく、生きてるだけで幸せで、ほんの一瞬だけど、その喜びを心と体で聴くんだ。音楽をつくるとき、その後ろには必ずなにか潜んでいるものがある。それが何かはわからなくて、いつもつかみたいって思う。」
 Kip Hanrahan「all roads are made of the flesh」1995年を聴く。ジャズをベースにブルーズなどのブラック要素を投げ込んだ独特の匂いを放つ黒い空間。拡張してゆくマイルス・デイヴィスとは異なる、ジャズの拡大深化の一形態だ。拡大であって拡張ではない。ジャズのブラック芯は厳として存在している。

 ブックオフ長泉店で二冊。中村真一郎「再読 日本近代文学集英社1995年初版帯付、太田忠司「レンテンローズ」富士見ミステリー文庫2002年初版210円。

 早坂類さんが今日のブログで坂東壮一氏の手彩色銅版画集の感想を書いている。お連れしてヨカッタ。
 5月28日のブログでは私のことをこう書いている。
「美術館の館長さんでもあり、大変な博識で、かつ、素晴らしい鑑識眼の持ち主なのだが、わたしが思うに、どうも、なんだか、どこかがとっても怪しいのだ。」
 怪しいかあ。いいねえ。

 来館者に指摘されて気づいた。きょうが開館十周年記念日だ。