二十年

 ブックオフ長泉店で七冊。玉城康四郎現代語訳「正法眼蔵 1〜6」大蔵出版1994年初版帯付、1995 年2刷帯付、「色のイメージ事典」同朋社1991年初版、計735円。「正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)」全六冊揃い新品同様は嬉しい。なにせ一冊定価4500円だから。

 昨日買った鈴木いづみ「ハートに火をつけて! だれが消す」の結末部の文。
「彼女はたぶん、わたしよりも困難な時代を生きる。熱っぽさのない、のっぺりした時代を。」
「生きてみなければわからないことがある。わかってしまったあとでは、もうおそいのだ。」
「ひとが歳をとっていくのを見ることは、ほかのどんなことよりもつらい。」
 1983年に出た小説でこのように書き遺した鈴木いづみは、その後書くことはほとんどなく、三年後の1986年二月に首吊り自殺した。あれから二十年。この言葉が胸に沁みる。K美術館開館二十年はあるだろうか。あと十年。想像できない。

 美術館の駐車場に出て空を仰ぐのが習慣になっている。雲の変化を仰ぎ見る。そのまだら模様の雲と青空が、部屋の中で絵画をじっと見つめている眼に新鮮に映る。ただそれだけで気持ちが安らぐ。生きているとはこういうことか。
 この十年、よくぞやってきた、と思う。夢の実現のためには切り落とし削ぎ落とさねばならぬことばかりだった。そんなガマンをして……後悔はなかった。僅かな来館者のために開けている。その僅かな来館者の喜び感心感嘆感動感銘を期待して美術館を開いている。「美の震源地」と表しているけど、来館者には感震度いくつだろう。きょう朝日新聞静岡マリオンに紹介されたので、早速来館者。彼女にとっては震度2くらいかな。知人男性は感震度4くらいの印象だ。初めて目にした安藤信哉の水彩画にえらく感心していた。