詩とファンタジー

 山崎正和「アルスの復活」(「文明の構図」文藝春秋1997年収録)を再読。何度目かの再読。読むたびに新鮮な印象を受ける。K美術館を始めるにあたって力強い励ましになり、その後は信頼に足る判断基準ともなった。優れた論文なので、短い引用では要点が抜けてしまうおそれがあるが、少し引用。

「外にたいしては『応用藝術』を純粋藝術から区別する根拠がなくなり、内においては、主題や描写対象を拒否する必然性がなくなるであろう。藝術が目的を持つことと、目的に支配されることとは冷静に区別され、逆に目的を持つことによって、藝術は純粋な過程として自己を確立することになるだろう。」

 ブログ古書の森日記27日http://blog.livedoor.jp/hisako9618/朝日新聞社『聖戦美術展集』が紹介されている。画家の安藤信哉も戦争画を描かされている。昭和19年の「文部省特別美術展覧会に出品された絵は「学徒」。モンペ姿の俯きかげんの女生徒を横から描いたもの。それだけの絵。戦時の屈託がさりげなく描写されている。今見ると、反戦絵画〜厭戦絵画としか見えない。しっかりした人だった。
 その葉書大の白黒写真を見て、八月の企画展のプロデューサー市川直二郎氏は「上手いねえ!」と感嘆しきり。安藤信哉の評価は日毎に高まっていく。昨日来館された女性画家も、展示中の絵に絵心を刺激されていた。

 やなせたかし編集「詩とファンタジーhttp://www.kamashun.co.jp/fantaji.htmlが秋に刊行される!! 「詩とメルヘン」の再生だ。かまくら春秋社、やるなあ。

 ブックオフ長泉店で二冊。泡坂妻夫「湖底のまつり」創元推理文庫1994年初版、なかにし礼「愛人学」河出文庫1999年初版、計210円。