紗の雨

 もう秋雨だろう、霧雨というより紗のような雨だ。こういう雨は好き。お昼前に止んでしまった。
 鞄の中には新聞の切抜きが入っている。忘れていた。毎日新聞7日夕刊の切り抜きは飯嶋和一「晴れても降っても」。1970年代の神保町。
「かつて大汗をかいて飛び込んだ喫茶店は『スウィング』も『コンボ』も『響』も、とうの昔に店を閉めた。唯一、以前のままのたたずまいで迎えてくれるのは、神保町交差点手前の『トロワバグ』だけである。」
 時代は非情に移り変わってゆく。昨日国道246号線を軽四輪トラックで走行しながら流れ行く景色に無常を感じた。山も谷も川もある変化に富んだ地形を黙殺し、一本に貫くなだらかにして滑らかな道だ。眼下はるか下に渓流が垣間見える。下の谷間にうねうねと曲がった細道が見える。ずっと昔はそこが街道だったのだろう。
「高速道路は橋や川の上に君臨し、私たちの心を潤す水は視界から消えた。」
 川名登「河岸(かし)」法政大学出版局への田中優子評(毎日新聞9日)より。

 曇天の下、本屋で「きょうの料理」9月号を買い、文春文庫と光文社文庫の解説目録をもらう。ブックオフ長泉店で三冊。桜庭一樹「少女七竈と可愛そうな大人」角川書店2006年2刷帯付、篠田真由美アベラシオン講談社2004年初版、山田詠美「風味絶佳」2005年初版帯付、計315円。「風味絶佳」は大きい帯付は持っているけど、これは細い帯も付いているので。帯一本に105円。

 美術館へ戻ると安倍首相辞任のニュース。この人はいつも時機を失している気がする。