ルーブル

 ルーブル美術館のことではない。「カラマーゾフの兄弟」で問題になった金、3000ルーブルのこと。当時のロシアの貨幣単位1ルーブルは、現在の日本ではどの位の価値なのか。昨日読んだ本には一切触れられていなかった。
 それにしても、やはり凄い小説だ。一個人のなかで欲望(愛欲・金欲・知欲)と絶望とが同時にせめぎあい、期待と狼狽とがほぼ同時に押し寄せる。その深遠と深淵の転変を一気に描き出してしまうドストエフスキーの超人的な力業。その深みを果たしてどこまで受け留め、探照できたか甚だ心もとない。いくつかの解説を読んでみたが、どれも群盲象を撫でる印象だ。あるいは都合のいい箇所をつまみ食い。以前も感じたことだけれども、まさしくロシア的野人作家だ。

 静岡新聞コラム「私のとっておき」は谷沢永一の「新潮日本語漢字辞典」。
「しかも解釈が素晴らしい。わが国の慣用語である『宗教』の意味を、『神仏または神聖とされるものに関する信仰』と訳したのが画期的である。日本人の宗教観をこれほど的確に説明している辞書はこれまでなかった。」
 「カラマーゾフの兄弟」では宗教と信仰も重要なテーマだ。ロシア人の宗教観は日本人とはかなり違うと思うが、どう違うのかは私にはルーブル同様わからない。