薄日の転機

 薄日の差す曇り空。ふっと一吐息。
 源兵衛川への生コン流出事故に関するニュースは「源兵衛川 生コン」で検索するといくつも出てくる。

 林望「書藪(しょそう)巡歴」新潮文庫1998年を読了。落ち着いた文章が慌しい心を憩わせる。林望が近世国文学書専攻の書誌学者だとは、恥ずかしながら知らなかった。イギリスのことをよく書いているので英文学者とばかり思っていた。思い込みはこわい。じつに印象深い書物だ。古書愛好家は、まず座右に置くべき一冊かな。とは、自分への戒め。巻末の「語釈」は勉強になる。未知の沃野だ。自らの無知を思い知る。本文からも迂闊な思い違いを漢字から気づいたり。「袖珍本(しゅうちんぼん)」は知っているけど、「巾箱本(きんそうぼん)」129頁は初めて。「就中」をとりわけと読んでいれけど、「なかんずく」110頁が正しい。「将来」180頁と「招来」の違い、思惟には「しゆい」140頁という読み方もあることを知ったり。「軈て」は「やがて」95頁と読む。「麾下」は「きか」184頁と読む。こういう漢字はまず使わない、いや使えない。「坊間(ぼうかん)」64頁あたりでも使う機会があるかないか。「観世コヨリ」98頁はブックオフで105円で購入した日本語大辞典(講談社)のカラー写真で理解。二層三層構造を愉しめる本だ。
「由来、日本人は、本の表紙が比較的に堅く厚いことを好む民族である。」133頁
 私のことか? 「転機」の章にはしみじみ。
「もはや、母校に戻る芽はすべて絶たれた。」180頁
「すべてはあらかじめ約束された『幸運』であったのかもしれない。」181頁
 源兵衛川もそうであると思いたい。