霏霏霏霏

 つくづく自分はKYだなあとボヤキながら朝刊を開くと、次期日銀総裁にはKYの人を、という記事。KYとは金の流れを読める人の意。これは難しい。
 なんて感想を抱きながら冷たい雨の降る中をとぼとぼと歩いていて浮かんだ五輪真弓のヒット曲「恋人よ」。

  ♪恋人よ〜 そばにいて〜
  凍えるわたしのそばにいてよ〜♪

 凍える私のそばには……無情の雨ばかり。なんて書くとカッコいいかも。実態はサブイ〜だけ。雨を透かして南の山は雪が積もっている。向うは雪。北東南、三方雪。雪雪雪。

  霏霏霏霏と書きならべたり妖(うつく)しき雪霏霏とふるかぎりもあらず  白浦十郎太

 グレッグ・イーガン「宇宙消失」創元SF文庫を読了。サイエンス・フィクションではないスペキュレイティヴ・フィクションだ。空想科学小説ではなく(奇想)思弁小説。「ナノテクと量子論が織りなす、戦慄のハードSF」は文庫の惹句。以前量子論の入門書を読んでいたので、「シュレディンガーの猫」といった話題にもそれなりについていけた。私は面白く読んだが、そんな知識がないと読みとおすのが難しいかもしれない。山岸真「訳者あとがき」から。
「それは本書が、日常的・常識的感覚となじまない量子力学を、ダイレクトに個人の問題として描き、そしてここでも、微にいり細をうがった議論がとことん展開されるからである。伝統的な文学的価値観で解釈すれば、本書は小説よりアイデアを重視したSFということになるだろう。」
 この小説によって、私には不明瞭な量子論がある程度腑に落ちたということは特記すべきだろう。
 宇宙論でエレガントという表現がよく使われる。この小説では「実験の明確さが損なわれるのよ。」172頁で「明確」に「エレガント」とルビが振ってある。宇宙論でいうエレガント elegant は「優美な」といった意味だと思っていたが、「すっきりした、明確な」の意味で使われているのかも。門外漢にはワカラナイ。

 ブックオフ長泉店で二冊。武内元代編「結び方全書」池田書店2002年初版、松田道弘「奇術のたのしみ」ちくま文庫1985年初版、計210円。前者には人間の絆の結び方までは載っていなかった。