兆から階へ

 今朝も寒。日曜日に勉強会で川を案内するので朝、その下調べに自転車で源兵衛川と御殿川中流を見て廻り、川へ入る。水がろくに流れていない御殿川はもののみごとにゴミ(茶碗のカケラ)だらけ。よしよし。ゴミ拾い体験にはうってつけだ。と気が抜け滑ってよろけ、長靴は水びたし。……これで危険度も確認できたわ。それにしても自転車では風がさぶい。徒歩で美術館へ来る。今朝は氷点下三度。

 昨日の話題の続き。ムンク、ドイツ表現派といえば上條陽子さんの絵だ。彼女は1978年、第21回安井賞(画壇の芥川賞)をムンクを連想させる油彩画「玄黄─兆」で女性初の受賞。その後1989年の久方ぶりの新作個展ではドイ表現派ばりの油彩画を発表。あの上條陽子がトチ狂ったか? と悪評さくさくだったとは、後日の彼女の言葉。その個展後に六本木の画廊で木葉井悦子さんから上條陽子さんを紹介された。「種村季弘氏のお友だちなら」と、彼女は画集をくださった。その画集を見て仰天。どれも凄い作品ではありませんか! 後日悩み抜いて選んだ一点「赤い花」 を購入した。最近、上條さんの当時の油彩画を希望する人がいる。飛び抜けた作品は発表時にはなかなか理解されないもののようだ。時代の切先を、その先を切りひらいているから、見えにくいのだろう。来るべき美の兆(きざし)が、時代の美意識への階(きざはし)にかかるまでには時間がかかる。上條陽子さんでさえ十年以上かっかった。味戸ケイコさん北一明氏はまだまだ先か。

 ブックオフ長泉店で二冊。レベッカ・ブラウン「家庭の医学」朝日新聞社2002年初版帯付、E・ケストナー「人生処方詩集」ちくま文庫1992年3刷、計210円。