俳句・しんしんと人名

 三月というのに未だに朝はしんしんと冷える。俳句のしんしん表現を少し。

  しんしんと重さがたのし歩みゆく  星野立子

  沖しんしん潮音空に凍み響き  高屋窓秋

  しんしんと肺碧きまで海のたび  篠原鳳作

  しんしんと桜が湧きぬ墓の闇  鷲谷七菜子

  相倚るやしんしんとして霧の底  安住敦

 俳句には人名を入れたものがかなりある。○○忌という句は数知れず。姓と名のどちらかを入れた句もずいぶんある。以下はその一例。

  漱石が来て虚子が来て大三十日  正岡子規

  フリードリヒ・ニイチェのごとき雷雨かな  平井照敏

  秋(さはぎり)の咒文碑日夏耿之介  石原八束

  ラフカディオハーン忌の橋渡りけり  原裕

  酒戸彌二郎茶つ切駿河の茶の博士  平畑静塔

  梅雨ながしパチンコ屋のジャン・ギャバン  鈴木六林男