桜だ〜

 今年は桜の開花が早い。満開になるのも早いようだ。昨夜、三島大社の夜桜を観に行く。照明を受けて漆黒の夜空に浮かぶ七分咲きの壮麗さ。満開になるとこれに愴絶な趣が加って息を呑む凄艶な美しさに。昼間は艶麗、夜は凄艶。

  さくらよりさくらにわたす一年の木深(こぶか)き闇にまぎれかゆかん  
                          上田三四二

 今年は例年なら枝垂れ桜の満開後に開花する染井吉野桜がいち早く開花して、枝垂れ桜に染井吉野桜が重なってそれはそれは見事な絢爛豪華。

 午前中、NHK静岡放送局が企画展の取材。記者は小原古邨、鏑木清方そして川瀬巴水木版画にとりわけ注目。カメラマンは、21日(金)の調印式にいた私を覚えていた。

 丸谷才一「挨拶はたいへんだ」朝日文庫2004年を楽しく読んだ。
「世の中で一番勇敢な男は、阿部お定が出獄したあと、彼女と最初に関係した男ぢやないか」
 う〜ん、座布団二枚〜。
 巻末の井上ひさしとの対談での丸谷の発言。
「歌仙をやりだして感じたのは、明治四十年以後の文学が連句を馬鹿にして、あれは文学じゃないとか、藝術じゃないとか、不真面目な遊びだとか、そういうことを言って否定したのはもっともなことだなということでした。歌仙や連句を認めたら、近代日本文学は崩壊してしまうもの。明治末以後の日本文学は窮屈な自己のなかに閉じこもって、これが真面目で立派なことだと思い込んだ人たちの作ったものでした。他者がいなかった。そこで当然の結果として社交もなくなった。」
 近代日本美術も同じだ〜。