発明超人、超人小説

 新戸雅章「発明超人ニコラ・テスラちくま文庫読了。ニコラ・テスラ(1856年〜1943年)。一時エジソンと同じ会社にいたこともある、文字どおりの天才科学者。
「技術に明るい者たちは、早くも彼をエジソンを上回る史上最大の発明家と認め始めていた。」161頁
「発明王エジソンの最大のライバルにして、科学の天才。交流システムや高周波の分野でかくかくたる業績をあげながら、一般にはほとんど無名。晩年はホテルを転々とし、孤独と窮乏のうちに生涯を閉じた。」あとがき
 飛び抜けた頭脳による構想力=先見力のゆえに、先駆者の悲哀をとことん味わった人。顕彰されるべき人だ。

「『幻影城の時代』も、何とかある出版社から出版することになりそうだ」
 という記述。昨日購入の笠井潔「天啓の器」双葉社1998年は、探偵雑誌「幻影城」に深く関わった中井英夫塔晶夫)の長編小説「虚無への供物」を巡る話。この評が参考になる。

 昨日触れた工藤直子さんは、中井英夫氏が当時住んでいた羽根木のお宅から駅よりのアパートに住んでいた。工藤直子さんに挨拶してから中井英夫氏に再会した。それは1983年の風薫る五月の午後だった。もう四半世紀も経つか。ニコラ・ステラ死して65年、中井英夫死して15年。共通する人生を感じるのは、私だけではあるまい。