11周年

 きょうで開館11周年。沼津市の書家松本竹志氏から楽しいお知らせ。中国の博物館が入場無料になったと。それで、どこも満員御礼を超えて入場制限しているとか。氏は先だって訪れた西安だけだと思っていたら昨夜、中国の張得蒂女史と話して全国だと知った。それの誘因は、女史が書いた上記 記事ではないか、と松本氏は言う。中国最大の美術雑誌の記事だから。小さなK美術館は中国に一石を投じたか。

 山口昌伴「水の道具誌」岩波新書2006年はじつに愉快。そして深い。軽快な文章の後、心にじいんと残る深い読後感。
「たとえば升酒を飲む。升にお酒(日本酒)を注いでもらう。もっといっぱいまで注いでよ。もう満湛でしょ。もうちょっと──升の縁よりお酒がぷうっと盛りあがる。表面張力で。焼酎だと盛りあがらなくて、零れてしまう。解説は『水の科学』に譲る。日本酒の表面張力を知って『もうちょい』とねだるのは『酒呑みの道具学』」。68頁
 あとがき。
「本書は先述の連載を骨子としたと言ったが、じつはもとの活字が見えなくなるほど書き込みを加えた。その字が! 蝿がとまっているのか蚊が潰れてるのかとよく見たら文字だった、と評されたほどの悪筆金釘流。」
 身につまされる。
 201頁に手廻し洗濯器「カモメホーム洗濯器K105人工衛星型」の写真。いいカタチ! 昭和30年代初頭のこの製品、2005年に「通販生活」で復元して売った。売り切れ。どんな使い勝手だろう。
「なぜ三○年代なのか。」
「木や竹、皮、石で作った道具の時代の質実剛健さを当時は工業製品も継承していた。それに、人の手のかかわる部分がまだまだ残されていた。だから許せる。だから懐かしい、のであろう。」210頁