自動車絶望工場

 毎日新聞昨夕刊、武田徹「雑誌を読む 7月」の題目は「秋葉原事件」。中央公論8月号の佐藤優、天宮処凛「対談 秋葉原事件を生んだ時代」にかんして。
「雨宮は加藤容疑者が『最低賃金が安く、派遣労働者の"草刈場"』である東北地方出身者だった事実を重視、フリーターを見殺す格差社会問題と関連づけて事件を語ろうとする。しかしそんな雨宮が『蟹工船』には言及するのに、このタイミングで鎌田慧自動車絶望工場』(講談社文庫)を素通りしてしまうのは意外だった。というのも東北出身の非正規雇用者と言えば、季節工として自動車工場に就職した鎌田がまさにそうだったのだ。この確かな符号こそ確かな議論の足場になる。鎌田が感じた『絶望』は、フリーター見殺しが就職氷河期世代以降に新しく始まったものでないことを示す。」
「不安定な身分で働く心情を切々と綴った鎌田のルポをなぜ手がかりにしないのかと思ってしまう。」

 鎌田慧自動車絶望工場』(講談社文庫)を読んだ。1972年9月から翌年2月までトヨタ自動車季節工として働いた記録。読中から暗澹たる気持ちになる。
「第六章 期間満了!」の章「二月三日」。
「このことは、トヨタの方針、『弊社では採用の当初から自衛隊除隊者を単なる労働力とは考えておりません(ということはうはやはりほかの労働者を"単なる労働者"として考えていることだ)。」以下略
 「二月一二日」。
「本工労働力が使い捨てなら、出稼ぎ者はもっと短期間の消耗品だ。」

 ブックオフ長泉店で二冊。スーザン・セリグソン「パンをめぐる旅」河出書房新社2004年初版帯付、ハインリッヒ・シュリーマンシュリーマン旅行記 清国・日本」講談社学術文庫1998年5刷、計210円。