「夕暮の諧調」

 塚本邦雄「夕暮の諧調」人文書院1971年、あとがき「微志片簡」から。

「ここに夥しい既発表の文章の中から、かろうじて残すに足ると考えられる数篇を選んで、ささやかな一巻を編むこととした。」

 本田一楊という人の短歌。

  一茎(ひとくき)の花は日暮れとまぎれゆきわかなくなりぬ手にすくへども

 ボオドレール「夕暮れの諧調」への返歌のようだとは、私一人の思いかもしれない。昭和十五年発表のこの一首を冒頭に、塚本邦雄は書いている。

「おそらく、まことの芸術とは、稀少な、選ばれた享受者をのみ期待する、孤独な営為に一生をかけた作家のある時、たまたま成し得た作品の謂いであろう。享受者は空間と時間を超越して、作家と相呼び、言問う。」

 この数日雨に合わせたように古本に出合わなかったブックオフ長泉店。きょうは晴れて自転車で。都筑道夫「猫の舌に釘をうて/三重露出」講談社大衆文学館1997年初版、和田誠「シネマッド・ティーパーティ講談社文庫1983年初版、E・S・ガードナー「カナリヤの爪」ハヤカワ・ミステリ文庫1977年初版、ジョン・ファウルズ「魔術師(上・下)」河出文庫1991年初版、ミステリー資料館編「文芸ミステリー傑作選 ペン先の殺意」光文社文庫2005年初版、計630円。気分スッキリ。「魔術師」は単行本で読んで面白かったので、文庫本も持っているけど、見ると買いたくなる。都筑道夫のこれも同じ文庫も持っているけど、見ると買いたくなる。都筑の本の新保博久の解説冒頭。
「『猫の舌に釘をうて/三重露出』、このカップリングは最強である。」