一九五八年

 昨日買った松沢呉一「エロ街道をゆくちくま文庫、「エイズ時代のコンドームマーケットとは?」の冒頭。
「私の目はここ数日腫れている。コンポステラのサックス奏者・篠田昌巳(元じゃがたら)が死んでしまった。音楽家としても、人間としても、篠田氏がもうこの世にいないと考えるのはあまりに辛い。」
 胸がじいんとした。昨夜は篠田昌巳のCD「COMPOSTELA(コンポステラ)」1990年を聴き通した。十二曲五十分ほどの演奏だが、どれも切々とした哀しみがさりげなく隠れていて、それがこちらの心をいたわりの共感へそっといざなう。名演だ。セピア色のジャケットでにこっと微笑む篠田昌巳。ライナーノートで小玉和文が書いている。
「このアルバムに収録された12曲は12の星の光と言ってよいだろう。」
「時代が重ねられていく中で、その時間の分だけ反省と祈りも重なっていけばいいはずなのに、1990年の今も、明と暗、強と弱、富と貧の構造は一層くっきりとしていくばかりだ。」
「篠田昌巳は1958年東京生まれの、笑顔の印象的な音楽家である。」

 篠田昌巳も松沢呉一も1958年生まれ。ついでに小説の姫野カオルコも。一九五八年生まれはどこか外れている人が輩出した年だわ。

 午後、遠方からの来客二人を知人と一緒に源兵衛川を案内していると、金木犀(銀木犀?)の香り。そこかしこに花。うーん、いい香り。

 ブックオフ長泉店で二冊。松浦理英子「犬身」朝日新聞社2007年初版帯付、小松左京「旅する女」光文社文庫2004年初版、計210円。後者は「『完全版』刊行にあたり、著者が加筆訂正しました。」