声に出して読んでみたくなる日本語

 「瀧口修造の詩的実験 1927〜1937」思潮社1971年縮刷版を本棚から抜いてぱらぱらと読んだ。昔惹かれた散文詩「絶対への接吻」にやっぱり惹かれた。冒頭を引用。

   ぼくの黄金の爪の内部の瀧の飛沫に濡れた客間に襲来する
  ひとりの純粋直観の女性。 彼女の指の上に光った金剛石が
  狩猟者に踏みこまれていたか否かをぼくは問わない。 彼女
  の水平であり同時に垂直である乳房は飽和した秤器のような
  衣服に包まれている。

 以下続く散文詩は、目で追うよりも声に出して読むと一層興趣がわく。でも、声を出して読む速度がなんとも難しい。二つの冷たく輝く水晶が、衝突して砕け散り、無数の星のように破片がきらきらと飛散してゆくような詩的言葉の流れるような美しさをどうやって発語するか。私には無理だあ。

 午前十時から午後一時まで、名古屋大学の教授学生ら十四人を、源兵衛川などへ案内。終了時、引率の方から「先生をしていますか」と訊かれた。全然と答えると「話がうまかったから」と。これは嬉しい評価だ。