北斎・写楽

 広重とくれば北斎瀬木慎一北斎漫画歳時記」美術公論社1981年、「『北斎漫画』──伝説と現実」結び。
「最後に一言書き添えると、世界で最初に北斎に関する論文を書いたのもアメリカ人で、一八六九年という驚くべき早期に、この国の特異な収集家ジェイムズ・ジャクソン・ジャーヴスがそれをあえてしている。日本人がまだ北斎を狂人扱いしていた頃である。」

 狂人扱いならまだしも、全く知られていなかったのが、写楽。以前引用したが、フリーダ・フィッシャー「明治日本美術紀行」講談社学術文庫、「一八九九(明治三十二)年 三月三日 東京」から。
「日本の博物館は、浮世絵を完全に無視している。『このような卑俗なものは、当館にはふさわしくありません』しばらくまえ、館長の山高氏はにべもなくこう言い放った。いつだったか、日本の芸術家や博物館関係者がわたしたちを訪れたとき、きょうのオークションで写楽の浮世絵がなんと千三百円(二千七百マルク)の高値で売買されましたよ、と意気込んで話してはみたが、ひとりのこらず狐につままれたような表情を見せ、八人が八人とも写楽という名前に何の反応も示さなかった。つまりかれらは、なんと写楽を知らなかったのだ。」

 ブックオフ長泉店で二冊。ジョナサン・カラー「文学理論」岩波書店2005年8刷、水上勉「薔薇海溝」光文社文庫2007年初版、計210円。