虫の息・虫の声

 昨夕、閉館間際に味戸ケイコさんから電話。一時間あまり話して閉館。午後七時に館を出ると、壮大な虫の声に全身包まれる。今年は蝉の声ばかりで秋虫の声が聞こえないなあと不思議だったけど、なあんだ、帰宅するのが早かったせいだ。疑問解消。この猛暑、私を含め、いろんな人が息も絶え絶え虫の息だったけど、昨夜と今朝はやっと涼しく、これで虫の声を楽しむ余裕ができる、かな。

 メリメ「カルメン」を読んだ。すんげえ悪女〜!だけど、免疫ないのね〜、こういう女性に。私も。
「彼女の眼はとりわけ、私がその後どんな人間の眼にも出会ったことのないような官能的で同時に凶暴な表情を湛えていた。」
「あたしの望んでるのは、自由であること、自分の好きなようにすることなのよ。」

「約束したことは守るという誇り高さを持ち、愛を誓った男には徹底的に尽しながら、心が移ると平気で裏切り、嘘をついても恥じないカルメン」(訳者平岡篤頼の解説)

 カルメンは類稀なる悪女だろうが、翻ってみれば、自身には見事に忠実な女性だ。惚れた男は天獄、惚れられた男も天獄。後は地獄へ真逆さま。息も絶え絶えの人生だ。

 ブックオフ長泉店で二冊。赤江瀑「獣林寺妖変」講談社文庫1982年初版、ゲーテファウスト 第一部」集英社文庫2004年初版、計210円。前者は「ニジンスキーの手」と改題された角川文庫で読んでいるが、角川文庫の中井英夫の解説にたいして異議をさしはさんでいるので購入……は後付の理由で、松田修の解説なので買ったら、そんな記述に出くわした。