昨日の話題の続き。メリメ「カルメン」を読んだのは、十二月に企画展をする林由紀子さんが「杉捷夫訳の『カルメン』は訳が古くて読みにくい」ともらしたから。平岡篤頼の新しい翻訳で読んでみたところ、読みやすかった。彼女が話題にしなかったら、いつ読んでいたか。中井英夫はメリメを愛好していた。メリメ全集が刊行されて書かれたエッセイ「散文精神の城──メリメ」(昭和五十二年)から。
「第一回配本は小説2だが、そこに収められている杉捷夫氏訳の『カルメン』を初めて読んだときの衝撃はいまだに忘れがたい。」
「この昭和十五年前後、次々と刊行されたメリメやフランスやリラダン、さてはラブレーでもヴァレリーでも、それが同時に純正典雅な日本語の時ならぬ饗宴でもあった意義は大きい。」
純正典雅な日本語が、昭和十五年から七十年近くを経た平成二十年の現在にはどう映るだろうか。林さん同様私にも、もどかしさを感じさせる気がしてならない。
昨日話題のもう一人、赤江瀑の「花曝れ首(はなされこうべ)」講談社文庫1981年の解説で、小説家山尾悠子は昭和五十六年六月現在の「私の好みによる赤江瀑短篇ベストファイブ」をあげている。
1位「花夜叉殺し」
2位「花曝れ首」
3位「禽獣の門」
4位「夜の藤十郎」
5位「罪喰い」または「春喪祭」あるいは「阿修羅花伝」
小説現代新人賞「ニジンスキーの手」が落ちているのが好みの別れ目か。
味戸ケイコさんから、広島県の美術館に貸し出してあった「わたしのいもうと」の原画9点が戻ってきたので、知人女性に手伝ってもらい、全点を展示。これで完全な展示に。
ブックオフ長泉店で二冊。ゲオルク・ジンメル「ジンメル・コレクション」ちくま学芸文庫1999年初版、ロバート・B・パーカー「初秋」ハヤカワ文庫2007年18刷、計210円。後者は「期間限定カバー」と銘打ってある。