Fondamenta degli incurabili

 須賀敦子「地図のない道」新潮社1999年を読んだ。著者の遺作。収録された「ザッテレの河岸で」1994年発表にヨシフ・ブロツキーが話題になっている。
ヨシフ・ブロツキーの作品に《Fondamenta degli incurabili》というタイトルの小さなエッセイ集がある。」
「友人の言葉どおり、ほんとうにいい本だった。」
 イタリア語の訳題は「不治の病人河岸」。ヴェネツィアにある河岸で、ブロツキーのこの本では一回だけ出ている。
「家を出てすぐ左へ曲がり、二分後にはぼくらは、不治の病人河岸(フォンダメンタ・デッリ・インクラービリ)に出ていた。」金関寿夫・訳

 須賀敦子はこの地名の由来を探索する。そして苦労の果てに彼女はやっと突き止める。
「私が探しもとめていたこの病院の設立理由は、なんと、梅毒にかかった娼婦たちを収容するためだったのである。なおる見込みのない病気というのは、ペストでもハンセン病でもない、梅毒だった。」

 英語の原題「 Watermark 」(水位標、紙の透かし模様)が、日本語では「ヴェネツィア・水の迷宮の夢」となり、イタリア語では「不治の病人河岸」となる。

 ブックオフ長泉店で二冊。池井戸潤「金融探偵」徳間書店2004年初版、松浪和夫「核の棺」講談社文庫2007 年初版、計210円。