夕暮れは秋

 秋の夕暮れはえもいわれぬ複雑に深い色彩に満ちていて、四季のなかでは最も好きな夕暮れだ。

  すでにして詩歌黄昏(くわうこん)くれなゐのかりがねぞわがこころをわたる  塚本邦雄

  雁ゆきてまた夕空を滴らす  藤田湘子

  谺して一打の斧も熄(や)むゆふべあな寂しもよ詩歌のゆくへ  安永蕗子

  雨季来りなむ斧一振りの再会  加藤郁乎

  菜食を守りていくばく生きのびむ鬱の世昏れて赤き月出づ  築地正子

 短歌はどうも詠嘆→歎きに流れるきらいがある。俳句はそこを絶つ……かな。しかし、上田三四二のこんな短歌もある。

  輪郭があいまいとなりあぶら身の溶けゆくものを女(をみな)とぞいふ

 彼にはこんな歌も。

  五十八歳あした試筆の墨にほふ不倶戴天の敵なく生きて

 私もまあ、そうだけれども、体に不具合が生じている。幸い「がんばれ阪神、がんばれ下半身」には縁遠いけど、五十八歳、老化とは体の劣化と実感。はあ。