北斎道子展最終日

 二週間休み無しで開催された北斎道子展、きょうが最終日。北斎女史は今度の新作はマンガだから皆さんに見ていただくほどの絵ではない……と、案内葉書はたった一通した郵送しなかった。それでも多くのファン、関係者が画廊にある葉書、新聞などの案内欄で知り、来館された。きょうも開館直後から来館者。殆どの方が開口一番「今までで一番いい!」と感想を述べられた。女史の「マンガだから」という謙遜は当たらない。ここで一言。私はマンガが低俗だと考えてはない。今回の女史の絵はマンガ的ではなく、「鳥獣戯画」の戯画の系譜に連なるものだと思う。このおかし味はまさしく日本的。

 平山郁夫高階秀爾「世界の中の日本絵画」美術年鑑社1994年は、飛鳥時代から大正期まで百点余の日本絵画に海外(主にヨーロッパ)の絵画を並置して鑑賞する本で、対置の組み合わせが興味深いのだけれど、「鳥獣戯画」 12世紀中頃にはアルブレヒト・デューラーの素描「子兎」1502年頃が対比されている。デューラーの兎には「その精緻きわまりない描写は迫真性に満ち」と説明され、戯画には「擬人化された兎は、動きのある秀逸な線描で描かれており、細部は簡略化されている」と説明。この「戯画」の解説は北斎道子女史の猫の絵に当てはまりそうだ。

 最終日のせいか、午後は続々と来館。こちらは二時間ほど源兵衛川の月例清掃で抜ける。川は水量が減ったけれども、カワセミがスーッと飛翔、三島梅花藻は元気に繁殖している。美術館の時間も愉しいが、川を清掃する時もまた気分がいい。それやこれやで川掃除も済み、北斎道子展も無事終了。好評でなにより。