人たちを見た

 昨夕帰りがけにブックオフ長泉店で二冊。近藤富枝「本郷菊富士ホテル」中公文庫1983年初版、森崎和江「奈落の神々 炭坑労働精神史」平凡社ライブラリー1996年初版、計210円。前者はやっぱりダブリだった。「おわりに」から。

「文学はコワイと思う。菊富士ホテルを書くためにインタビューした多くの人たちの中に、私は菊富士時代の同宿の作家に傾倒し、自分の才能をねこそぎ吸いとられ、形骸になり果てた何人かの老境にある人たちを見た。」

 そう、文学は魔物。有吉佐和子瀬戸内晴美高橋たか子……桑原桑原。

 ここ数日、D・バーンズ「夜の森」国書刊行会を持ち歩いているだけで読む余裕がない。昨日来館した、一月の企画展で三連作の油彩画をお披露目する女性画家にこれをちょっと読ませた。ジィーっと読んで「なんだかわからない」とボソッ。だよなあ。まだ半分を過ぎただけ。
「そのとき、デンマークの伯爵の老いたる牝豚がさらさらと衣ずれの音させて入ってきた。猫をかぶる哀れな連中を見ると、わたしの心は痛む、どうせかぶるなら小便壷か、そいつを投げ棄てる窓かにすればいいのに。」103頁
 こんな素敵な訳文があるので、ついつい読んでしまう。

 午後は三島市の有線テレビ放送会社の林由紀子展の取材など。