鞄の中身/マックス・エルンスト

 「財布の中身」つながりで吉行淳之介「鞄の中身」講談社1974年11月28日刊を読む。

「たやすく鞄の中に入ってしまった。その鞄を提げて逃げる。」

「おい君、鞄をあけたまえ。」

 下の文はマックス・エルンスト「百頭女」河出書房新社1974年12月25日刊の「第三の章」から。河出文庫では129頁。吉行淳之介が「百頭女」を手にして書いたのかと思ったが、「鞄の中身」は1973年に雑誌発表。私個人の共時性だ。

 大岡信氏の文化功労賞受賞記念祝賀会で参加者に配る詩集にサインを墨書するお手伝いをしていた時、ついでに「一九九八年一月廿九日 大岡信」と墨筆してもらった大岡信「藝術と傳統」晶文社1963年の「あとがき」。

「表紙の銅版画は駒井氏のアトリエでぼくが選んだものだが、最も好きな氏の作品のひとつでこの本が覆われることは、この上ない喜びである。」

 その駒井哲郎「ある空虚」1957年は、私も好きなのだが、マックス・エルンストの直接的な影響を感じてしまうのは私だけか。

 昨日、雨の中、年配の紳士が来館。一階の企画展示でのりんご箱がじつに良いと仰るので、ちょうど居合わせたコーディネーターの内野まゆみさんを紹介。ドアの外で紳士が熱心に話している。あのりんご箱について熱弁をふるったとか。そう、あの七つのりんご箱は、現代アートインスタレーション)の美しい成果だと、私は思う。その紳士、箱根の某有名彫刻美術館の方だった。二階の展示が良かったとも。流石お目が高い。

 ブックオフ長泉店で二冊。クリフォード・アレン「異常心理の発見」ちくま学芸文庫2006年初版、「このミステリーがすごい! 2005年版」宝島社2004年、計210円。