軽い短篇

 有栖川有栖太田忠司麻耶雄嵩若竹七海「血文字パズル」角川スニーカー文庫2003年を読んだ。スニーカーという呼称に合った軽い四短篇。オバマならぬオバカ・ミステリに近いが面白くてスラスラ読めてしまう。スラスラ進まないのが、木田元「偶然性と運命」岩波新書2001年。以前読んだときにはすーっと読了したはずが、今回は興味深いけれども手こずっている。オツムの老化か、以前は勘所を読み逃していたのか。はてさて。「芸術作品の完成」の項目から。

「画家や彫刻家がその作品を完成したと意識する瞬間にも似たようなことが起こっているのではないかと私には思われる。(略)たとえば、われわれの眼にはまだまったく未完成にしか思えない作品を、ロダンが完成したと感じるとき、彼にはそれまでの創作活動の全体があたかもこの瞬間を目指して進行してきたかのように組み替えられるのではなかろうか。それほど明確なイメージのかたちをとっていたわけではないにしても、ある志向──おそらく一つの世界を構成しようという志向──が創作活動を導いてきたのであり、その志向が充たされたと感じられた特権的瞬間に、これまでの活動──さんざん無駄な動きもし、往きつもどりつもしたこれまでの活動──が再構成され、まるでこの瞬間を目指して一筋に進んできたように見えてくるのであろう。」40頁

 坂部隆芳氏来館。明治の木版画に仰天される。

 ブックオフ長泉店に行くが、ダブリ本ばかりが眼につく。手にはとるけれど、棚に返す。本棚が一杯一杯になってしまい増設しなくちゃいけない。ああ。