和風競艶

 一階展示室の木版画レイアウトはほぼ決まり。あとは入り口ホールの展示だけれど、いろいろなアイデアがあり、骨董屋からの搬入品によって変るだろう。今は展示室に駿河箪笥が二棹置いてあるだけ。その箪笥、ここに置くと俄然魅力全開。そして木版画。小原古邨、川瀬巴水、高橋松亭ら、K美術館の一押し作品がズラリ。ガラスが無いので色彩一際鮮やか。まるで一昨日刷り上ったよう。箪笥ともども保存状態がいいから美しい。
 文明開化の激変を受けて、それに負けない和の美を創るため、江戸以来の庶民の美を一皮剥いてモダンにさせた開化絵。ジャポニスム=日本趣味の流行を受けて、和風の伝統を見直した結果、小原古邨、川瀬巴水、高橋松亭らの和の「新版画」が生まれた。それも印刷技術の革新と庶民の好みの変化、第二次世界大戦を経て20世紀半ばにほぼ全滅。そして平成も21年、21世紀になって8年、西洋圏内の極東と成り果てた日本は、記憶に埋もれていた日本独自の和の魅力にやっと目覚める。西洋=デジタル(機器で割り切る)に対する和=アナログ(割り切れない手わざ)の復権。たかが版画たかが箪笥と言い捨てられない、卓越した職人技の、今だからこそ気づく和風の美がここにある。この和風競艶、じつに新鮮。