オランピアと反逆

 高階秀爾「名画を見る眼」岩波新書ではマネの油彩画「オランピア」が最終十五章。

「風紀的な観点から見れば『オランピア』は当時の社会に対する反逆であったが、絵画表現の上から言えば、それは西欧四百年の歴史に対する反逆だったと言ってもよい。」183頁

「『オランピア』のヴィクトリーヌが、なまなましい肉体をわれわれに感じさせるのは、主としてマネの絶妙な色彩表現の力なのである。/ しかし、対象のヴォリュームを出そうという行き方は、画面の二次元性を強調しようとするこの作品全体の傾向と正反対のものである。立体感と二次元性とは、本来両立し得ない。その両立し得ないはずのものが、マネのこの作品では、ぎりぎりの所で奇蹟的に均衡を保っている。この画面の与える緊張感と、不安感とは、まさにその点に由来するのである。」187頁

 みごとな分析にただ感服するが、このような分析から、私は北一明氏の茶碗に連想が働く。彼の茶碗と陶彫オブジェは、千利休以来四百年の歴史に対する反逆だった。

「『オランピア』を非難した人びとの怒りは、裸の王様を裸の王様と言い切った子供に対する大人たちの偽善的な怒りに近いものがあった。」182頁

 北一明氏への陶芸界からの反響(怒り)と黙殺を連想する。