一点

 一昨日書いた宮部みゆきの言葉に引かれて昨日、泡坂妻夫「恋路吟行」を読んだ。推薦文の意味がわかった。たしかに。全十篇、どれも好短編だけれど、最後の「子持菱」には胸がじいんとした。う、上手い! 脱帽拍手。

「読者は至福の涙とともにこの一巻を読み終えることになるに違いない。」

 縄田一男の解説どおり。怪の会・編「エンサイクロペディア アワサカナ 泡坂妻夫事典」1999年刊行を手にして読んだので、子持菱も一目瞭然。これは便利。昨夜は、それにしても、と不思議な暗合に陶然とした。昨日、来館者で中断した「雪帽子」の続きを帰宅してから読んだのだけれど、中断した次のページに「雪女」の絵の描写。その絵は、友だちが描いている雪景色の絵の、描きあぐんでいるその一点を具体的に描写していた。参った。なんという共時性。その友だちが家族で来館、本を贈る。

 表題作には使ってみたい会話。

「不良なのね」
「はい」
「何人も、なんでしょう」
「そんな……不良になりたくなったのは、あなたを見てからです」

 友だちが私の貸した荒川洋治「心理」について書いている。

 ブックオフ長泉店で二冊。「豪華版 日本現代文学全集 28 横光利一集」講談社1976年10刷、松本剛「鉄道文化財めぐり」カラーブックス1994年初版、計210円。前者は、長編小説「旅愁」を読みたくて。しかし、いつ読むんだろう。日本の手付かずの長編小説は、泉鏡花婦系図」、島崎藤村「夜明け前」、谷崎潤一郎細雪」など。野間宏「青年の環」の再読を始めたところだけど、いつ読了するやら。三十年前は暑い盛りに二週間で読破したけど。今回は二箇月でも無理な気がする。